第4話 バーニャカウダ
「調子悪いなぁ…」
男は家路の最中、ため息をついた。
この一週間この男は体調が優れなかった。
一応医者にもかかったが風邪などの病気というわけでもない。単に本調子ではないというだけだ。
「季節の変わり目で体が疲れているのかもな。何か体を労れるものをしっかりと食べよう」
男はそう考えて近場のスーパーに寄った。
目に付くのは野菜ばかり。しかし、
「いかにも健康食然とした料理は好きじゃないからなぁ。もっと野菜をもりもり食べられるやつを作りたい」
そう考えてアイディアを探しに野菜売り場から一旦離れる。
店内をうろついていると、缶詰売り場の一角に目が行った。
「アンチョビか…。そうだ、季節の野菜でバーニャカウダと洒落込もう。確か家に白ワインもあったはずだ。それと合わせつつ野菜を沢山食べよう」
既に不調のことを忘れて今週末の晩酌モードだ。
早速アンチョビ、ニンニク、オリーブオイルをカゴに入れ、野菜売り場へ向かう。
「ブロッコリーは入れるとして、人参や大根も入れよう。余るだろうが、如何様にも使えるだろう。あとはパプリカで良いか。」
そんな形で好きなように野菜をカゴに入れていき、レジに並ぶ。
最早顔馴染みとなったレジ打ちのおばさんも、またこの人か、といった顔で会計を済ませていく。
毎週末にそこそこの量の食材を買っているからだろう。
家に帰り、早速バーニャカウダソースを作り始める。今日も数日分を作るつもりだ。
「さて、どうやって作ったかな」
だが、今日も男はレシピがうろ覚えだ。
何となく次のような感じたったと記憶している。
まずは、ニンニクの臭みを取って潰す。
次にアンチョビをオリーブオイルで煮ながらほぐす。
最後に潰したニンニクとオリーブオイルでほぐれたアンチョビと混ぜる。
こんなうろ覚えの知識だが、男は取り敢えず作ってみることに決めた。
まずはニンニクの皮をむき、6〜7個程鍋に入れて臭みを取る。
お湯で煮て臭みを取るのが伝統的だが、最近は牛乳で煮るのが主流らしい。男は流行りに乗っかることにした。
20分程煮たら容器に移し、フォークの背で潰す。
この20分の間に野菜の方も準備する。
ブロッコリーは小房に切り分け、レンジで蒸す。
人参や大根は皮をむいてスティック状に切る。
パプリカは縦に切り、種を取る。
続いて、アンチョビをほぐしていく。
アンチョビを小鍋に100グラムほど入れて、オリーブオイルをひたひたに注いで、弱火で温める。
ふつふつと温まってきたらアンチョビをほぐす。
鍋の中に潰したニンニクを入れて混ぜる。
もう一度軽く温めて、深めの容器に注ぎ、ソースの完成である。
ちょうどブロッコリーも蒸し上がり、他の野菜と一緒に皿に盛り付けて準備が完了。
白ワインを注ぎ晩酌を始める。
まずは白ワインから。
白の割にボディがしっかりとしている。ソースは多めにつけた方が合いそうだと男は感じた。
そしてバーニャカウダ。まずはブロッコリーから。
ブロッコリーの食感にアンチョビの旨味とニンニクの香りが乗る。
続いて人参や大根。シャキシャキとした食感が合う。
パプリカにはシャキシャキと感に加えて甘みも乗る。
とても五感が楽しい。特にブロッコリーが旨い。
再度ブロッコリーにソースをたっぷりとつけて口に放り込み、白ワインを流し込む。
何とも言えない風味が口腔から鼻腔へと通り抜け、男は悦に浸る。
男は今週も満足して終えられそうだと独りごちた。
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