⑸ ウィンナーパン
契約でも、
自分の仕事以外は俺の所にいてくれる。
ここに来る事を"帰ってくる"と言うハミン。
俺がハミンの帰る場所でいれるのは、
今だけでも嬉しい。
俺が思った事と一緒の事…
ハミンもパープル+イエローを綺麗って…
それだけで嬉しい。
母が亡くなってると勘違いしたり素直な所…
俺が傷ついてるんじゃないかって
すぐ心配してくれるのも嬉しい。
自分も韓国人のくせに、
俺なんて行った事も無いのに
"さすが韓国人!"ってはしゃぐし、
食べ物の好みが一緒だと
ニコニコしてるのも嬉しい。
出会ってからも、出会う前も、
俺がハミンを好きな理由は沢山ある。
…理由じゃないか…
もう雰囲気だけで好きなんだ。
俺の欲が、抑えられないほど。
けど…
言ったら、彼女がいるハミンは困るかな。
「テヨンは、自分の事好きだよね?
テヨンの才能とか、その性格とか、
ホントみんなに愛される為に
産まれてきたよね…」
「…?別に…そんなに好きでも無いよ?
そんなに愛されてるとも思わないし…」
いつもの様にハミンの身体、
抱き枕の様に俺に委ねてくれてるから
ベットの上で安心して寄り添う。
「…僕は、自分の事
そんなに好きじゃないんだよね…
…だから、好きな人に好かれても
僕をなんで?って疑問に思ったりするし、
逆にその人の事
ずっと好きでいれるか不安になる。
自分の事すら愛せないのに、
自分が好きな人をずっと愛せるかって…
自信がないっていうか…
そしてまたそんな僕をなんで好きなんだろ
ってループ…」
「…ハミンは愛されてるでしょ?
ハミンは優しいし…」
「それって…
僕が、優しく行動してるだけであって…
僕がそういう行動をやめたら…
…あー…もう寝よう…
眠いから余計な事喋ってる…寝ぼけてる…」
「…ハミンは誰に愛されたいの?
彼女もいるでしょ?」
彼女に愛されてても、不安なの?
ずっと愛せるかなんて…
そりゃ、なんだって形は変化するし、
熱だって変化するもんだし…
そんな悩み、何にも問題ないと思うけど…
俺に入る隙は、あるのかな。
「…俺じゃダメ?」
…返事は無かった。
まだ寝てないはずだけど…
聞こえなかったかな。
俺もハミンを抱きしめて眠りについた。
「テヨン、テヨン、僕起きるよ?」
近くで俺に声をかける、愛しい声。
目を開ければ腕の中に、愛しい人。
こんな状況ですぐ離せるわけないんだけど…
いつも脚を退かされ、
腕からすり抜けられてしまう。
俺より小さい身体のくせに、
こういう時は力が出るらしい。
「…あ…、言い忘れてたけど
今日父の知り合いが1人来日するから…
食事を1人分多く作って欲しいんだ。
…友人として。」
「あー、偵察の人?
いきなり来るとかじゃないんだ。
フフッ優しいね。
昼ご飯から?昼ご飯は僕も一緒に食べて、
午後出かけるけど
夕ご飯には帰ってくる予定。
夕ご飯何作ろうか?」
…ほら、帰ってくるって言われるだけで
俺はこんなにも嬉しい。
「…ねぇ、キスしていい?」
「…なんだよ、いつも聞かないで
してくるくせに。」
「我慢出来ない時はそうだけど…」
「我慢出来るなら我慢して。
僕を何だと思ってるんだよ…」
言ってもいいのかな。
困らせて契約解除とかされたら最悪だし…
…言わなくても伝わるくらい
全身で表してるんだけど…
すり抜けられたハミンの身体…腕を、
もう一度掴む。
振り払おうとされて、
余計に引っ張り身体を引き寄せた。
「ヤダ?だったらゴメン。
我慢出来ないから。」
俺の欲と混ざれば、いつも
ハミンも気持ち良くなってくれる。
それが更に俺を甘やかす。
また許してくれるはず。
まだ一緒にいてくれるはず。
逃げられないように覆い被さり、
顎から首にかけて手で押さえ…
一本ずつの指で顔を上げながら
キスを深く深くする。
俺の指一本一本、
サックスで鍛えられてて痛いかな…
少し強めだった力を抜き
逆にハミンの動きを指で感じる。
喉の動きを感じながら
舌で舌を味わい、濡れた唇を唇で味合う。
唇を離すとハミンと目が合うけど…
俺の目、正気かな…
ハミンの目は、少しトロけてる…
…俺の目、正気じゃないな、
ハミンと俺の欲を一緒に出したい。
シャツを捲り、胸、突起を舌で転がす。
感じてるのが分かる。
乳首が反応してるから。
声…我慢してる。…我慢するなって…
まぁ、出し方簡単だけど…
耳を舐める、中も。
セクシーで悩ましいね、高音が響く。
同時にハミンの身体を包んで煽れば、
ハミンの声だけで最高に感じる…
あぁ…ほんとヤバイ。
長く楽しもうと思えば、
焦らしたり保たせたりするんだろうけど…
ハミンを味合って
一緒に気持ち良くなろうとすると、すぐ…
今も、ハミンと自分のを一気に煽る。
なんでこんなにトロトロに混ざれるんだろ。
耳から唇を離し、
ハミンと目が合えば、目でも犯す。
目を瞑られたら、
唇を唇で犯し、舌をこれでもかって程
絡ませたら同時。
ハミンの身体が跳ね、…お互いのものも跳ねた。
夜ご飯を作る為
息を切らして帰ってきたハミンに、
数時間前に到着してたソンギを紹介した。
父のマネージャーで、家族のような存在。
俺の兄みたいな人。
趣味だったサックスを、
俺に教えてくれた人。
「上手いことやってそうじゃん。」
「そりゃ、この家も日本も慣れてるし、
1人暮らしなんて余裕。」
「…いや、あの子…ハミンさんがいなきゃ
食事適当になってたはずだよ。
どうせ頼んでやって貰ってるんだろ?
俺じゃない、誰か
偵察が来ても大丈夫なように。」
「…友達として…
助けて貰ってるんだからいいじゃん。
そーだ!これだって俺用意したんだよ?」
俺が買い物に行って、
ビールを冷やしといた。
ウィンナー入りハードパンを
テーブルに広げてつまんでる。
…パン、ハミンの手作りだけど。
「俺が言うのもなんだけど、サックスなんて
体力衰えたら吹けなくなるんだから
ちゃんと栄養あるもの食わないと。」
「…それはハミンがいれば問題無ーい。」
ほんとハミンは凄いなー
お昼に食べた違う味の焼きたてパンも
美味しかったしー
パンも美味しく焼けるなんてー…
「…ほんと、顔色良くて安心したよ。
数ヶ月前のお前は全てが面倒って雰囲気で…
それがサックスにも絵にも出てきてたから。
…親父さんとは離れるけど、
日本で、あの子と会えて良かったな。」
「…うん、適当に過ごしてたら
自分に跳ね返ってきて…全部面倒に…
ソンちゃんだって知ってるでしょ?
あの取り巻き!偉そうに
俺の絵がどーとか俺の身体がどーとか…
あの取り巻き夫人も、ネチネチネチネチ
俺の身体見たり触ったり…少し相手したら
バカみたいに勘違いするから可笑しくって…
あーー気持ち悪い!」
「…そう言えば…何でお前ビール呑んでんの?
ソンちゃんなんて呼ばれた事ねーし…」
「何でって、美味しそうに
ソンちゃんが呑むから……
………あーー気持ち悪い!」
やっぱり日本食を作ってあげたいけど、
好みもあるし、時間も無いし…
お稲荷さん、海苔巻き、あとはステーキ…
「ハミンさん、悪い。
テテがビール呑んで潰れちゃったから、
メシは軽めで…」
「え!潰れ…たんですか…?」
ソンギさんが
キッチンまで教えてにきてくれた。
「うん。もともとあんまり強くないのに、
気付いたら呑みすぎてた…
少し寝たら復活するはずだけど…
俺もテテもパン食べちゃったから、
ご馳走は今度でいいよ。大変でしょ。
ホント悪いね。」
「いや、ご馳走なんて程作れてないので…
お稲荷さんと海苔巻きだったら
落ち着いた時いつでも食べれるんで
作っときます。
ソンギさん、ステーキ好きですか?
焼くだけなんで、
良かったら食べて貰えたら…」
「…是非、食べたいですね。」
「ふふ、今焼きます。」
とっつきにくそうな雰囲気なのに、
喋ると柔らかい感じ。
何より、笑顔が可愛い。
…年上に失礼か。
「じゃあ、テヨンはほっといて、
ここで焼きたて召し上がって下さい。」
「そうですね、
飲みかけのビール持ってきます。」
僕も久しぶりにビールを飲んだ。
ここに来て、初めてだ。
「ホント、ハミンさんのお陰で、
テテが生き生きしてる。」
「え、あ、はい。
僕、ご飯、頑張って作ってます。」
「ハハッ、ご飯じゃなくて、
ハミンさん自身、のお陰。」
「あー!まぁそれなりに…
楽しく過ごせてますけど。
テヨン自体マイペースだし、
僕のペースと合うのかも…」
僕は…友達って思われてるよな…?
「…テテは、
人を見過ぎるくらい…本心を見るから…
自分では気付いてないけど、
相手と同じ対応をするみたい。
だから、少し前パリで
人間関係が荒くなっちゃってね。
そういう人達を近づけちゃった俺に
責任があるんだけどね。」
「…相手と同じ対応ですか…
まぁそういうの、みんなあるかもですね。」
「うん。テテは特にってくらい。
ハミンさんは……いや、何でもない。
テテが幸せそうで良かった。」
「え?何ですか?」
「…あー、えっとー…
…チラッとさっきテテが…
ハミンさん彼女いるって言ってたから…」
「あー、はい。」
「あ…いるんだ。
…親バカみたいな俺に口を出させて貰うと…
ずっとテテの近くに居て欲しいけど…」
「…それは…そうテヨンが思ってくれてたら
僕は喜んでいるつもりです……けど、
住む世界が違過ぎて…でも、
一緒にいる時は2人の世界過ぎて…
よく分からないんです。」
南雲さんと会った日、
自分の気持ちを整理しようと思った。
考えれば考えるだけ、
整理しようにも無理な事に気付かされた。
契約解約して
元の生活に戻るのも簡単だけど、
会えるうち、一緒に過ごせるうちは、
一緒にいたい、会いたいと思う。
…仕事が終わったら、
すぐテヨンに会いに戻った。
帰り道、気を紛らわす為の音楽でさえ
テヨンの事しか考えられなかった。
…テヨンの声で聴きたいな…
こっそりテヨンの歌、買ってみよう…
…僕が頼んだら…歌ってくれるかな…
いつもの知らない歌のアカペラも、
僕が頼んだ歌も、最高だった。
僕は、面倒な事は避けたくて
彼女がいるって嘘ついたけど…
そんな防御の為の嘘は、
もう何の役にも立たなそう。
すっかり、簡単にはテヨンから
抜け出せない所まで来てる。
もう自分を守るものなんて無しにして、
テヨンの行動…
自分の気持ちを信じてみようか……
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