⑷ ゼリー



ハミンを色で表すと

クリームイエロー?



俺は青味がかったパープルかな。



濃いパープルじゃダメ。

…彼と合わないから。



俺もホワイトパープル。


淡い色になって、


反対色でも


彼と混ざったら


キレイなマーブルになるんだ。









彼を知る前

パリでも1人暮らしをしていた。



料理は全くしないで外食か適当に家でパンとか。


洗濯は天気が良くて気が向いたら。


掃除も適当に。



1人で過ごしたい時でも誰かが訪ねて来た。

大抵、父の取り巻き。

目的は俺の絵を見る為って言うけど、

何でそんなにってくらい

俺の身体や顔を見て来る。


…少し気分が乗れば相手をしてあげた。

愛されるのは、悪い気分では無い。


俺からの見せかけの愛情でも、

相手を幸せにしてあげれると思った。


みんなからの愛情へのお返し、

偽物の愛情でも

バレなければお互い幸せでしょ?


お互い幸せなまま、バレる前にサヨナラ。


逃げるタイミングはいつでもあった。

サックスのツアーなんて、絶好の…いや

絶交のチャンス…特に離れ易かった。



ケータイで連絡取り合うなんて

もともとしないし、

外でデートなんてしたいと思わない。


相手から誘われても、面倒くさいで一蹴。



実際、男も女も…何人かと適当に遊んでたら

ボロが出ていたはずだけど、

直接文句を言ってくる人はいなかった。


けど悪い噂が耳に入る。

俺がしてきた事で、

みんなが悪口を言ってたんだろうな。



別にしょうがないけど。


別に嫌われようとしたわけじゃ無いのに。



俺だって、誰かを愛せたら

幸せなのになって思ったけど……



…俺を好きって言う人は、

俺の何を好きなんだろ。

どうせ見た目だけしか好きじゃないんだろ。

そりゃこの見た目も俺だけど。



絵画のように観賞用扱いの父の取り巻き達、

だんだん俺の気持ちも色褪せていった。


…このままじゃダメだ。

俺に色が無くなったら。





パリでの人間関係を断ち切る為、

また日本に住みたくなった。

1人で住んでやる。



父は今の1人暮らしの状況で、

更に日本で生活できるのか心配して来た。


別に何も問題無いんだけどな。

食事なんてどうにかなるし、

掃除だってそれなりに…業者に頼んだり。

出来ない事は、頼めばいい。


何故か、1ヶ月の条件を出された。


きちんとした生活が出来なかったら、

パリに戻って来いって。

…俺、それなりに働いてるし、

大人なんだけどな…


まぁ、

おじいちゃん程の年齢の父からしたら

いつまでも心配なのは分かるから…

心配させないように

日本で業者に頼らず、生活してみせよう。







ほんとハミンを知ったのは偶々。


日本に戻るし、日本語を思い出す為に…

何か面白い番組とかあるかなー

なんかお腹すいたなー


美味しそうな物を作る番組動画を見つけた。

繰り返し見た。彼が作るのを何度も見たから、

もう自分でも作れるんじゃないかって程。









「……何でなんの返事もないんだろ……」


今朝ナグと会って、

ハミンが仕事へ行ってから何度もLINEした。


慣れないケータイ。

連絡取り合うのなんてハミンだけ。


朝からケータイは黙ったまま。




契約でもいい。

彼女がいてもいい。

俺の側にいて欲しい。


テレビのままの笑顔を俺だけに向けてくれるし、

一緒にいたら楽しかった。楽しい。


ハミンからの優しさ、愛が欲しい。


こんなに欲しがる自分に焦る。

今まで人から当たり前に貰ってたのに。


今まで

自分の気持ちが締めつけられる様な、

跳ねる様な、

頭と心がこんなに別なものだとは

気がつかなかった。



ハミンの優しさはお金で買ったけど、


俺はハミンが好き。

そう、好き。


全身で表現してる。




俺の絵、どう?好きになって。


俺のサックス、どう?好きになって。


俺の歌、どう?


俺の声、どう?好きになって。


俺…、どう?好きになって。



…好き、を…好きになって。…にしか

変換できてない。


どうしよう……






ハミンが用意してくれたご飯、

食べないと…


ナグが帰ってすぐベットに入ってしまい、

お腹は空いてきたのに出れなくなってしまった。


ケータイが鳴れば飛び起きるのに。




今、何時頃かもわからない。


遠くでドアが開け閉めされる音。

足音。

…合い鍵を持ってる人の中で…誰か来た。


ハミン以外だったら誰でもどーでもいい…


ハミンだったら、

ここに来て。




「……起きてる?…ね。

何で何も食べてないんだよ…

具合悪いの……?」


「………」


「ごめんね今朝、僕、機嫌悪くて…」


「……ケータイの…返信無かった…」


「え?……だって…ハミンハミンってだけで

何て返事していいか分からないだろ…」


「…そう…なんだ…」


何でもいいから返事欲しかったのに。


「…まだ寝てる?それともご飯食べる?

…仕事でゼリー作ってきたの、

持って帰ってきたけど…食べる?」


ケーキの箱が入ってるみたいな

袋を見せながら

ハミンが聞いてきた。


「…それ、ここで食べたい。」


「まぁいいけど…」


「…ハミンは、ホント…優しいよね。」


「…?…結構…冷たい人間かもよ…

自分の事優先しちゃうし…」


「…ふっ、それぐらい普通でしょ。

俺の方が、よっぽど冷たい人間だよ。」


「…ほら、ゼリー。」


使い捨てスプーンと一緒に渡されたゼリー。

食べていくと…

透明なゼリーの中に

紫色のブドウと、黄色のパイナップル。


「イエローとパープル……」


「綺麗でしょ?

他のフルーツでも作ったんだけど、

1番綺麗だったから…」



ゼリーをベットに置いたら少し倒れたけど、

ハミンの腕を引っ張り

首に手を回して

…キスしたかった。


ベットに倒し、押さえつけて、

深く深くキスする。


愛情の確認は難しいけど、

…とりあえず、我慢出来ない。


俺が求めたら、

反応してくれる事だけで嬉しい。

俺の欲と、一緒になってくれるだけで

嬉しい。


また、死にそうって理由で、

ハミンを味わう。



「…今っ帰ってきた、ばっかりでっ…

汗とか…汚いのに……っっ!」


ごめん、汗とか体の匂い、余計そそるだけ。

嫌がっても反応してる…

ハミンを離さず、味わう。


「…おいし…」




ホント気持ちいい。

焦らしたりしないし、俺もすぐ…



シーツで汚れを拭き取って丸める。

どうせゼリーこぼしたし、洗濯。



「…怒ってる?」


「…慣れたよ。

テヨンの意味わかんない行動には…」


これの意味…好き以外に何があるんだろ…



「…ねぇ…

…じゃあ、お願いきいてよ。

今…月と星がキレイでさ…なんとなく

これ聴きながら帰ってきたんだけど…

テヨンの声で、聴きたいと思って。」


そう言ってケータイからハミンが流した音楽は、

高音がキレイな歌だった。


俺、いつも低音で褒められるんだけど。


「テヨンの声、いいよね。

さすがミュージシャン。

…テヨンの低音もいいけど、

高音もすごく好き。」


「……好き??

…ハミン、その歌、最初から。」



♩ー♩ー♩ー♩ー


I know you're somewhere out there

somewhere for away〜

I want you back〜

I want you back〜

My neighbors think I'm crazy〜

But they don't understand〜

You're all I have〜You're all I have ……♫

(Bruno Mars Talking to the moon)




…声、高い所でるかな…


初めて好きって言われた、高音。



ハミンの為だけに…


歌いながら、

閉めっぱなしだったカーテンを開けてみた。


確かに、月も星もキレイ。



ハミンもカーテンの隙間、夜空を見てる。



…そのハミンの笑顔の方がキレイ。








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