"="の意味、ちゃんとしてください
いーぜろ
be動詞はイコールと同じ意味
部屋ではテレビからワイドショーが流れている。それを横目にスマホをいじっていたわけだが、何やら信じがたいことを聞いてしまった。
どうやらいろんな都道府県のイメージについてインタビューしているようだ。
取材班
「香川といえばなんですか?」
女子高生
「えー、やっぱりうどんじゃないですかー?」
サラリーマン
「讃岐うどんですね。この前行ったんですけど、うどん、うまかったっすねー」
取材班
「うどん以外で香川といえば?」
主婦
「うーん、そういわれてもねぇ。ほら、香川=うどん、みたいな感じじゃないですか」
・・・今なんと?
香川=うどんとは何事か。それはつまるところ香川はうどんであるということでございますか。いやいや、問題はそこではない。そういう言い回しは別にいいのだ。問題は何かというと、香川=うどんとういうことはつまり、香川はうどんであり尚且つ、《うどんは香川である》、ということになってしまうからだ。
全国のうどんが香川になったらたまったもんじゃないな...全く、
なんてことを思ったが、もちろんそんなことがツッコまれるはずはない。スタジオのゲストたちは、あそこの骨付き鳥がうまいだとか何とか、香川のあまり知られていないグルメについて話を弾ませているようだ。
それからほかの県にも話が進んでいって...
◆◇◇◇◆
というのがつい昨日のことだった...と思う。
俺は食堂で、今しがた注文したうどんと目力勝負を行っている。無論、相手に目などない。一旦目を瞑って、開いてみる。変化はない。よし、現実を受け入れるほかに手はないようだ。
運ばれてきたどんぶりの上にあったのは、確かに香川だった。
「すいませーん」
とりあえず人を呼ぼう。いつものおばちゃんが困ったような表情をしながらせかせかとやってきた。
「あの...これは一体どういうことですか?」
ダシのうえに浮かんだソレを指さしながら恐る恐る聞く。
「これねぇ、私にもよくわからないのよ。」
はいぃ?私にはあなたが言っていることの方がよくわからないのですが。
「いやぁ、朝起きたらうどんが香川になっててねぇ。なんだかわからないけど、そいうことらしいのよ。」
「はぁ、そうなんですか。」
じゃあどうやってこれを作ったんですか。と突っ込みかけたが、向こうも状況を理解してないのだ。ドッキリにしては出来過ぎだろう。それからおばちゃんは戻っていった。
あとはこれをどうするかだ。まずはこのあり得ない事態を写真に収めておこう。それから...それから、こいつを喰らうッ!
う、うまい!?
とりあえず竹居観音岬あたりからガブっといってみたが、なかなかにうまい。本当に何でできてるんだこれ?だしに浸して、食べる。これはもしや名物になるのでは...いや、やめておこう。
で、勢いで完食してしまったのだが、ほかのうどんはどうなっているのだろうか。ツイッターを確認。
案の定、全国で同じような現象が起きているようだ。「夢の保存食品、誕生か?」いやいや、そういうやつじゃないからこれ。許すまじあの主婦。幸いにも香川はうどんにならなかったが、どうやらこの現象はうどんだけで起きているのではないようだ。
おいしく炊きあがったのは新潟だったり、じっくりコトコトにミニ北海道が入ってるのはほんと勘弁してほしい。てか、とうもろこし=北海道とか言ったの誰だよ。
「いや、まてよ」
と、ここで何かに気づいてしまった俺は今、そのスマホをゆっくりと傾け始めていた。
そのまさかな・・・
だが予想は的中。その手に持つ電子機器の裏側で黒く光っていたのは、だれが何と言おうが青森だった。どうやらGAFAは、Google、Amazon、Facebook、と最後にAomoriになったようだ。いつから青森が世界を動かす企業になったんだか。いや、昨日か。
ということはだな・・・あれじゃないか?
今こそ長年の人類の夢を果たす時が来たのだ。俺は迷うことなくその場で立ち上がり、大声で言い放った。
「俺=スーパーマンだあああッ」
あれ?おかしいぞ。
体には特段変化はない。周りから白い目で見られただけだった。
でもこれって・・・あ、まさか俺やっちまった感じ?これスーパーマン側が俺になったってやつ?
慌ててスーパーマンの画像を検索すると、そこには思いっきり手を伸ばして空を飛んでいる俺の写真があった。
「これめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん」
それで意識が飛んだ。
◆◇◇◇◆
目覚ましが鳴る。いや、目覚ましじゃないな。これはただのたタイマーだ。磁石が裏にくっついてるタイプの。
俺は塾で数学を教えている者で、今はちょうど授業がないコマだったので寝ていた。
にしてもひどい夢だった。特に最後のとか。数学教えてるんだからそうなることくらい気づいてくれよな。俺自重だな、うん。
まぁ = の使い方って、ちゃんとしてほしいよな。
それからちらっと時計を見て、まだ時間に余裕があることを確認する。それから一番近くの教室を見ると、どうやら英語の授業の最中のようだ。
講師の声が聞こえてくる。
「・・・で、be動詞というのは記号の = とほぼ同じ意味なので・・・」
なぜかその部分だけ大きく聞こえた気がして少しニヤっとした。やっぱり使い方ちゃんとするのって、無理そう。
スマホの裏に少しかじられたリンゴがきちんとあるのを確認して、俺は心底安心した。
"="の意味、ちゃんとしてください いーぜろ @E-zero
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