魔法③



 シンはどうしようもないまま夕方を迎えてしまった。


「失礼してもいいですか?」

「ひぅっ。どっ、どうぞ…」


 カナリアがシンの部屋をノックする。


 シンは大げさに反応してしまう。

 声が上ずった。


 急ぐような足取りでカナリアが部屋に入ってくる。


「シンさん。もう時間ですよ。早く行きましょうよ」


 カナリアが修道服をはためかせながら言う。


 シンは、カナリアは自分に何を期待しているのかと考えてしまう。


「どうしたんですか? そんな顔して。そんなに思い悩まなくても大丈夫ですよ。マリンさんは優しい方ですから」


 カナリアの笑顔に、シンは安堵した。


「それじゃ、私が訓練場まで案内しますね」


 カナリアが上機嫌にシンを連れて部屋を出た。


 シンの部屋からでは、庭園しか見えない。


 だからシンは、訓練場なるところを見たことがなかった。


「ふっ。はっ。せいっ」


 城内の屋外通路を歩いていると、男性の掛け声が聞こえてきた。


 鎧の動く音。

 剣が風を切る音。

 戦士たちの熱気。


 これら全てがシンたちの方まで伝わってきた。


「そっちじゃないですよ?」


 自然と音のする方へと行っていたシンは、カナリアに止められる。


 通路には、右に行けば騎士。左に行けば魔法使い。 

 とだけ書かれていた。


「私たちが行くのは魔法使い専用であり、賢者のみが使用できるところですよ」


 カナリアの説明で、更にハードルが高くなったような気がしたシンだったが、カナリアについていくだけだった。


 カナリアが、大きな施設の前に立ち止まる。


「ここですよ」


 見る人が見れば素晴らしいのだろうが、シンには目の前の建物の凄さがわからなかった。


「もういるみたいですね」


 中に入ると、凄まじい光景がシンを待ち受けていた。なんの変哲もない建物の中に、広大な大地が広がっている。


 何よりも目を引くのが、中央にいる炎の龍である。


「いけ! ドラゴニックフレア!」


 マリンの声が聞こえた。


 それと同時に、地面に勢いよく炎の龍が衝突し、大爆発が起こる。


「っ!?」


 衝撃がシンたちの方まで来た。


 シンは思わず目を瞑ってしまう。


「へぇ。来ないと思ってたわ。来るくらいの度胸はあるのね」


 こちらに気付いたマリンがゆっくりと近寄って来る。


 あれだけ大規模な魔法を使ったにも関わらず、疲れた様子もなく、汗一つかいていない。


 ドラゴニックフレアとは、賢者だけが使うことのできる魔法である。


「マリンさんは相変わらず凄いですね」


 カナリアが感心したようにマリンに話しかけた






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



次回で「魔法」は終わりです。


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これからもよろしくお願いします。

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