パーティー④
「あれが勇者様なのですね」
「なんていい顔立ちなのかしら」
「黒髪なんて珍しいですわね」
「あなた達、コソコソとはしたないですよ」
貴族の令嬢たちの言葉がシンの耳に入ってくる。
「ほう、あれが勇者か」
「まだ若さが抜けていないな」
「鍛えがいがありそうだ」
男たちからは品定めの目を向けられる。
シンの一挙一動がこの会場の誰もに注目されていた。
法皇の椅子だけが用意されており、ほかは立ちながらの会食らしい。
緊張を紛らわすように、シンはカナリアを探した。
(あんまりキョロキョロするのも良くないよな……)
男女がそれぞれカーペットを跨いで左右にわかれていた。
男性側には勇者の席が、女性側には聖女の席がそれぞれあった。
「なんでシンしゃんがカーペットをあるるいているんですか!?」
「カナリア様、慌て過ぎです。それに、面識はないですよね? らしくないですよ」
聞き覚えのある声が聖女の席から聞こえてきた。
シンは思わず立ち止まってしまう。
(カナリアさん? 聖女様だったのか? )
カナリアと視線が合う。
「勇者様? こちらが席ですよ」
執事に案内されたテーブルの前に立った。
傍から見ればただの一目惚れである。
やっぱり楽しい時間は続かないんだなとシンは思った。
カナリアは聖女で自分は勇者。
立場上での付き合いはあってもプライベートはほとんどないと言っても過言ではない。
近いようで遠い。
心地良い時間はもう来ないのかと、シンは内心落胆してしまった。
(僕が一方的に考えもしょうがないよな)
「法皇陛下の御入場です」
拡声の魔法によって会場に響いた声と同時に、会場の全員が一斉に頭を下げた。
それを見てシンも慌てて頭を下げる。
再び音楽が鳴り響く。
90は越えているであろう老人がビヨルドのときと同じような服を着て入ってきた。
ゆっくりと歩みを進め、中央のテーブルに腰を下ろした。
「皆、面をあげよ」
その声でようやく頭を上げる。
シンはこの光景にある種の息苦しさを覚えた。
「本日は聖女様及び勇者様の到着を祝った
パーティーに参加して頂きありがとうございます」
司会が挨拶をはじめた。
法皇が優しげな目でシンの方を見ていた。
シンは軽くお辞儀をしてしまう。
それを見て法皇か微笑んだ。
「それでは、乾杯! 」
気がつけば、皆グラスを掲げていた。
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短めです。
明日は19:00に2000字弱で投稿予定です。
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