パーティー③




「勇者様、どこへ行ってらしたんですか!?」


 シンが部屋にいないことに焦ったのか、執事がシンを見て叫んだ。


「す、すみません。すこし外の空気を吸いたくて」


 シンは誤魔化すように笑った。


 シンが部屋に入ると、すでに新しいパーティー用の服が用意されていた。


(これを着るのか……。こんなに高そうなの、着たことないよ)


 素材のことはよくわからないが、侯爵が着ていたような服がそこにはあった。


 教会のときと同じように、使いの人に服を着せてもらう。


 この流れにも少し慣れてきた。 

 と同時に、慣れてしまうことに対してどこか恐怖を感てしまう。


「明日の謁見は、任命式のようなものなので、今日のパーティーには法皇陛下も参加なさります。最初は陛下に挨拶に行きましょう」


 着替えさせたあと、執事がパーティーの流れを説明する。


「勇者パーティーの方々は後日到着する予定ですので、本日は使徒の皆さまや、貴族の方が多くいらっしゃいます」


 シンは貴族はエギルしか知らない。

 他の貴族がどうなのかは知らないが、あまり良いイメージはなかった。


「そうなんですね。こんなふうに祝っていただけて嬉しいですよ」


 シンはそんな考えを押し殺して応えた。


 カナリアも参加すると言っていたが、彼女は貴族なのだろうか?

 

 シンはそう思うと胸が締め付けられそうだった。


 貴族は嫌いだ。

 

 でも彼女からはそんな嫌なオーラは感じられなかった。


 他とは違う。

 包容力あるいは温かさ。 

 そんなものをシンは彼女から感じた。


「聖女様も参加なさるそうなので、今後のためにも挨拶ぐらいはしておいたほうが良いかと思います」


 聖女様。

 

 世界各地を巡礼し、人々に癒やしと祝福を与える神の巫女。


 シンにとって雲の上の存在だったが、今は同等である。


 小さなことでも、シンにとって、驚くには十分なことだった。


「そろそろお時間です。行きましょう」


 執事が腕時計を見てシンにそう言った。


 城の二階部分。

 付き人の執事によって大きな扉が開かれる。


「今代勇者様のご入場です」


 とんでもなく大きなホールの隅から、オーケストラによる音楽が聞こえる。


 熱烈な視線。

 期待の視線。

 音楽がかすみそうなほどの拍手。


 シンは縮こまりそうな自分を押し殺して、できるだけ堂々を装って中央に轢かれたカーペットの上を歩き出した。



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文字数が少なくてすみません。


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