仲間とともに
パーティー①
聖都に到着してかれこれ数時間がたった。
シンは応接間で歓迎を受けたあと、客室へと通された。
ベッドに仰向けになり、天井をぼんやりと眺める。
(もうあと5日もしたら魔王討伐に向けた訓練が始まるのか……)
司祭が応接間で言っていたことだった。
終始緊張で話の内容はほとんど入ってこなかったが、訓練のことと、今夜の歓迎会、そして明日の法王への謁見の話は聞いていた。
「歓迎会なんて、どんなことやるんだろう」
シンはぼんやり呟いて寝返りをうつ。
トリスと話をしようかと思っていたが、トリスの地位は高いらしく、話しかけられるような機会はなかった。
すでに外は西日で赤くなっている。
赤い光がシンの部屋にも差し込んでいた。
何をするわけでもなくシンはベッドから立ち上がる。
城内のことは何も知らないが、シンは部屋の外に出る。
廊下には赤い下地に金色の刺繡がされたカーペットが敷かれていた。
領都の教会のときとは違い、ドアの外には騎士が常駐していなかった。
「ここはどのへんなんだろう」
なんとなくだけで廊下を歩く。
しばらく歩くと人の声がした。
「勇者様が到着したって本当? 」
「ええ、本当ですよ。先程トリス様がそうおっしゃっていましたから」
シンのことについて話しているらしい。
シンは息を潜めてその場に留まった。
「勇者様が来たってことはついに始まるのね」
「そうですね。しばらくカナリア様とも会えなくなってしまいますね」
「あら、そんなに心配してくれるの? 」
カナリアと呼ばれている女性がクスリと笑う。
「少し一人になりたいわ。時間までには戻るから先に準備しておいてくれない? 」
カナリアがそう言うと、
「……はい。わかりました」
もう一人の少女は渋々と言った様子でその場をあとにした。
シンは少女が去ったタイミングで、自分が盗み聞きしてしまっていたことに気付いた。
カナリアの前に出るのか。
それとも別の場所に行くのか。
「そこにいらっしゃらるんでしょう? 盗み聞きはよくありませんよ」
それを決めたのはシンではなかった。
バレていたことにシンは驚きを隠せない。
「あっ……。えっと、迷ってしまって……」
シンは自分でもわかるくらいのぎこちない笑みを浮かべた。
「今日来たばかりなので。勝手がよくわからなくて」
カナリアの鋭かった視線が柔らかいものに変わる。
「初めてでしたのね。迷いますねここ。隣どうぞ」
親しげな声でシンに語りかけた。
カナリアがいるところは広いバルコニーのようなところになっている。
西日が彼女を優しく照らしていた。
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更新遅れました。
第二章のスタートです。
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