授けられた神託③
「俺は光魔道士だった」
「あいつ剣士だってよ」
「回復術士か。教会で働けば将来安泰だな」
子供達が次々と職業を授かっていく。
自分の職業に一喜一憂する。シンにはそれが贅沢なものに見えた。
どんな職業であれ彼らには親がいて、まだ養ってもらう当てがある。
仕事を初めるまでにも余裕がある。
ジキルに至っては生まれたときから将来が約束されていると言っても過言ではない。
シンは複雑な思いで子供たちを見ていた。
気がつけばシンが最後の一人になっていた。
最後の一人ということで、全員の視線がシンに集中する。
ジキルもシンに早く行くように催促した。
「っ!? 」
生まれて初めて当てられた大勢の視線にシンは気圧される。
「どうか無難なものでありますように。一人で生きていける職業でありますように」
シンは平静を保つようにブツブツと呟きながらオーブの前に立った。
大きく深呼吸をする。
これで一生が決まる。
もう一度深呼吸をした。
オーブに手をかざす。
「!?」
ビヨルドが驚いたように目を見開いた。
オーブが今までにないほど発光している。
シンはオーブの光に包み込まれた。
『勇者』
空中に半透明の文字が浮かび上がる。
教会内がざわついた。
「勇者!?」
「俺たちとんでもない瞬間に立ち会っているんじゃねえか?」
「実際にこんなことってあるんだね」
オーブは未だに強い光を放っている。
光に包まれたまま、シンは意識を失った。
◇ ◇
知らない天井。
初めてのフカフカなベッド。
シンは自分が今置かれている状況がよくわからなかった。
オーブに手をかざすと、強い光に包まれて、そこから先の記憶はない。
「ここは、どこ? 」
シンはベッドから起き上がり、周りを見渡した。
ホコリ一つない床。
教会と同じような白い壁。
窓からは西日が差し込んでいた。
シンはかなりの間眠っていたらしい。
自分がなんの職業を授かったのかさえわからない。料理人とかなら、厨房で雇ってもらえるかもしれない。
これから先のことを考えても、不安が増していく一方だった。
「エギル様は何処にいらっしゃるんだろうか? 」
エギルに何をされるかわからない。
そんな恐怖心から、シンは焦燥にかられていた。
侯爵邸の中かと思ったが、こんな部屋には掃除に入ったことがない。
「僕が知らない部屋? 」
シンが掃除にすら入れてもらえないような部屋なのか。
そしたらなぜ自分はここにいるのか。
疑問は尽きなかった。
どこであれ自分がいていい場所ではない。
シンはベッドを整え、部屋の外に出た。
見たこともない廊下に出る。
ここは侯爵邸じゃないとシンはようやく理解する。
ドアの横には騎士が常駐していた。
「お目覚めになられたのですね勇者様」
騎士が丁寧な口調で言った。
鎧が侯爵家のものとは違い、白を基調としている。
聞き慣れない敬語。
自分が勇者と呼ばれたこと。
シンには何一つとして理解が出来なかった。
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応援コメント、レビューありがとうございます。
星が増えれば一話の文字数が増えるかも………
明日から19:00を目安に投稿しようと思います。
今後とも「突然勇者」を宜しくお願いします。
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