リリンが死んだ村<2>
山吹色の山に日が沈み始めた頃に広場で祭りが始まった。先ほど話した紺色の服を着た老人が大きな旗を横に数回振った。その合図に合わせて派手な服を着た子供達が笛や太鼓を鳴らし始めた。奥の家から鮮やかな色の丸い棺桶を担いだ遺族達が出てきた。太鼓や笛の鳴る中、彼らは広場に入って棺桶を担いだまま彼らは大人達に挨拶していた。様子を見ていた私の所にも来て年老いた女が「うちのリリンの為にありがとうね」と礼を言った。私は黙って一礼した。
「送り火を上げろ~!」
老人の掛け声に合わせて大きな花火が空に数発広がった。
人々がどこの言葉かわからない歌を歌い出した。不思議と太鼓や笛の音と合っていた。そして棺桶を担いだ遺族の後を皆追い始めた。私も興味本位で一緒に後を追った。辺りが暗くなったが小道の脇に浮いた黒い水晶が紫色に輝いて道を照らしていた。水晶をよく見ると中心が紫色に輝いていた。その光が細かくいびつな表面で反射しながら回って走馬燈のような柄を地面に映していた。その紫色の光の中を華やかな衣装を着た住民達が歩いて行く様子は奇抜な派手さよりも死者を送る儀式に相応しい敬意と荘厳さを感じた。
黒い水晶に照らされた道を歩いた人々は紅葉が鮮やかな小高い山に入っていった。そこが村の墓地のようだ。私も一緒に石の階段を上った。そこには小さく開けた土地があり墓石が並んでいた。その一角に人々が集まった。あらかじめ穴が掘ってあり遺族達がそこに棺桶を置いた。
「眠りの歌を始めよ!」
老人が叫ぶと今までと違ってゆっくりした旋律の笛とドンドンと一拍一拍に深みを帯びた太鼓の音が辺りに響いた。人々が歌い始めた。遺族達がゆっくり棺桶を埋めていった。遺族達が埋め終わると人々が黒地に細い桃色の線が数本入った旗を両手に持って振りながら歌った。それがこの村の風習なのだろう。埋め終わると村の男達がその場所に墓石を置いた。遺族達が墓前で黙って立つ周りで人々がゆっくりと旗を振りながら歌い続けた。
「村に戻るぞ!」
老人の掛け声と共にまた明るい笛と太鼓の音が鳴り人々は踊りながら墓地を後にした。遺族達は相変わらず黙って墓前に立っていた。その様子を横目に私も人々と共に墓地を出た。明るく踊りながら黒い水晶が照らす道を歩いて帰って来た人々は一旦家に戻って酒や料理を持って来て広場に集まって地面に座って宴会が始まった。花火が夜空に鳴り響いた。宴会の中で遺族達が広場に戻って住民達に挨拶していた。その表情は色鮮やかな花火の下でとても明るかった。宴は深夜まで繰り広げられて無数の花火が空を彩った。
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