プードルスター選手権<4>
私が声をかけるとトニーは、
「そうだな。あいつらの方が上手かったからな。仕方ないさ」
と明るく答えた。
「また次に出ればいいさ」
私の言葉にトニーの動きがピクっと止まった。
「次か……今度はいつになるのかな」
トニーが空を見上げて呟いた。空に青白いオーロラがぼんやりと現れた。
「何だ。次はないのか」
トニーの沈んだ様子が腑に落ちず訊いた。トニーの体がぼんやりと輝き始めた。
「落選した奴は人間達の世界に修業に行くんだ。この空の光の幕に乗ってさ」
「そういう事だったのか……」
私は言葉を選ばずに励ました事を少し後悔した。
「でもさ、修行が終わったらまた帰ってくるよ。お前は死なないのだろ?いつかまた会えるさ。必ず」
「そうだな。また会おう。必ず」
「ありがとうな」
トニーの体から丸く光る物が浮かんでオーロラに向かって飛んで行った。そしてオーロラから似たような白く光る球体が降りてトニーの体に埋まった。
「う~ん……戻って来たのか」
寝起きの口調でそのプードルは起きながら呟いた。
「ああ、お帰り」
私はその誰か知らないプードルに穏やかに声をかけた。
「あんたは?ああ、この体の前の魂を見届けてくれたんだ。ありがとう。俺の名前は……向こうでチョコパンと呼ばれていたからそれでいいや。向こうでは人間達が優しくしてくれて楽しかったよ。それじゃ」
私も「それじゃ」と答えるとチョコパンは会場の外へ走って行った。
光の行き来が止んで空のオーロラが消えた。あっという間に日が暮れて星空に変わった。
私は真っ暗になった会場を後にした。
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