プードルスター選手権<3>

 しかしその後に続いた3頭のプードルもトニーに劣らずキレがあるダイナミックな芸で歓声が上がった。

 「あとは優勝候補のロンドだけだね」

 どこからか観客の声が聞こえた。

 「本日最後の出演者になります。ロンド!」

 名前を呼ばれて薄い茶色のプードルがステージに現れた。毛並みがとても美しかった。

 ロンドは2回転宙返りや捻りながらのジャンプをした。明らかに今までのプードル達と違ってジャンプに高さがあり躍動感があった。ダイナミックな技が美しく可愛らしい姿と裏腹に力強さを感じた。芸が終わり会場はまた大きな歓声に包まれた。

 「以上で全ての選手の芸が終わりました。それでは皆さん投票をお願いします」

 会場に響く声に合わせて私はステージ前の投票所に向かった。

 「おや、旅人さん。いかがでしたか?」

 ステージで司会をしていた黒いプードルに話しかけられた。

 「ああ、楽しかったよ」

 私は軽く答えて投票用紙に書かれたトニーの欄に〇をつけて箱に入れた。他のプードル達は投票用紙の名前に掌を押していた。手形が残る仕組みだった。その用紙を咥えて箱に入れていた。

 しばらくして開票が始まり観客はその場で待った。

 「さて開票結果が出ました。結果は……」

 いきなりステージの上に出演者の顔の画像が浮いて現れた。

 どこから映しているのだろうと私は会場を見渡したが、とくに光の筋は見えずに本当にステージの上に浮いているように映っていた。

 「この方です!」

 司会の声で顔の画像が一旦消えてその後に3頭の顔が表示された。

 「おおっ」

 会場がどよめいた。最後に出たロンドとトニーの後に出た2頭のプードルだった。トニーは入っていなかった。

 その後、表彰式が行われて選手権は閉会した。

 閑散とした会場でトニーがゆっくり歩いてきた。

 「残念だったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る