プードルスター選手権<2>
家々の壁と同じ水色と白のタイル石が地面に敷き詰められた広場では催し物をやっているらしく沢山のプードルが集まっていた。
「あのさ、頼みがあるんだ」
トニーが振り返って言った。私は「何だね」と答えて広場の様子を眺めた。
「ここで選手権があるんだ。俺、それに出るから投票してくれないか」
「選手権?」
私はトニーを見た。
「ああ、あのステージで芸を披露するんだ。投票が多いと商品がもらえるんだ」
「そういう事か。別に構わないよ」
私には意味もない事だが軽く引き受けた。
「それじゃ、俺行ってくるから。期待してくれよな」
トニーはそう言ってステージへ走って行った。
私は「選手権ね……」と呟きながら辺りを見渡した。広場に集まった沢山のプードル……良く見たら私以外はプードルだった。他の連中は私を見ても大した反応はしなかった。
しばらくして花火が空に鳴った。
誰が花火を飛ばしているのだと無駄なツッコミを入れつつステージを見た。
「さあ、プードルスター選手権の始まりだよ!」
ステージに立った黒いプードルの声に観客達が歓声を上げた。そんなに盛り上がるような事かと私は心で呟いた。
音楽が鳴ると白いプードルがステージに現れた。いきなり始まったようだ。前転とジャンプと後転と捻りジャンプの連続技に私は思わず「おおっ」と驚いた。
次の濃い茶色のプードルは歌を披露した。歌う姿は少し異様だったが声は綺麗だった。そして体操芸や歌などのプードル達の披露が続いてトニーの番になった。
「俺はこういう事が出来るんだぜ!」
トニーは宙返りや逆立ちをしながらダッシュして前転したりとキレのある体操とダンスを披露した。観客達はどよめいた。私は思わず「あいつやるな」と呟いた。トニーはいきいきと技を披露した。会場は大きな歓声に包まれた。
「ほお、これはもしかして優勝か」
トニーの芸は思った以上に良かった。生意気な口を叩くだけの事はあると思えるほど見事な芸だった。
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