枯れたひまわり畑<4>

 私は黙って掘り始めた。老人も掘り始めた。しかし老人はすぐ前かがみになって、

 「しばらく休むよ」

とその場に座って汗を拭いて服を脱いだ。痩せた体が茶色に日焼けしていた。

 「しかしあんたも不便な体で旅をしているな。そんな体だと美味い物は食えないし女を抱けないだろう」

 体の汗を拭きながら老人は私を見ながら言った。

 「不便というよりむしろ便利だよ。何の欲も持たない体だからな。たまに眠くなるだけであとは本当に何もないからな。どうして生きているのかもわからない位だ」

 「ハハハそうか。何もないから便利か。ものは考えようだな」

 老人は笑いながら立ち上がってまた掘り始めた。

 日が沈まないのでどの位時間が過ぎたかわからないが、私と老人の掘った水路がようやく繋がった。水は水路を伝ってひまわり畑にゆっくり流れ込んだ。しばらく水路の広さや深さを調整する為に二人で掘って無事に完成した。

 「まだ時間はかかるがこれで畑が潤っていくな。刈り取った後に育つひまわりは元気な花を咲かせるだろう。本当に助かったよ。ありがとう」

 老人は微笑んで礼を言った。

 「ああ、私も運動した甲斐があったよ。それじゃ」

 私は小さく手を振って老人と別れた。

 背後から老人の「よい旅を」の声が聞こえて私は振り向かずにまた小さく手を振った。

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