枯れたひまわり畑<3>

 「ここを今掘っているんだ」

 老人が指を差した。私は木の棒を拾ってそこから畑に向かって線を引きながら歩いた。

 「畑まで遠いが仕方ないか。それじゃ掘るか」

 老人は言いながら木の棒を拾って私の書いた線に沿って深く掘り始めた。私は畑側から掘り始めた。堅い土を木の棒だけで掘るのは大変だった。幸い私は暑さを感じないので体の疲労は少なかったが、老人はすぐに汗だくになった。

 「疲れたなら適当に休むといい」

 私が言うと老人は顔の汗を拭きながら、

 「ああ、もう少ししたら休むよ」

と前かがみになって答えた。老人は肩で息をしながら見るからに疲れていた。老いた体でこんな作業をよく一人でやる気になるもんだと私は内心呆れた。しかしこの老人にとっては領主の命令が絶対なのだろう。そう思った時にふと疑問に思った。

 「なあ、誰も手伝ってくれないのか」

 「ああ、みんな仕事があるからな。元々この畑は5人で仕事を分担していたんだがみんな若い内に流行り病で死んでしまってな。次の奴が来るまで俺が一人でやる事になったんだ」

 「あんたは病気にならなかったのか」

 「ああ、なぜか大丈夫だったよ」

 老人が遠くを見ながら答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る