枯れたひまわり畑<2>
「大事なひまわり畑だからな。頼んだぞ。うん?お前は誰だ」
男が私を見て不機嫌な表情で訊いた。
「私は旅人だ。たまたまここに寄ったのさ」
私が軽く答えると、
「そうか、ここは何もないからさっさと出ていく事だな。それじゃ」
と男は不愛想に答えて馬を走らせた。老人は深く頭を下げた。
「ふう、行ったわ。全くあの領主は愛想が悪くて嫌なもんだ」
老人は顔をかきながら言った。
「あれがここの領主かね」
「ああ、俺が生まれるずっと前からな。全く不思議なものだ。子供の時からずっとあの姿のままだからな。死なないのか化け物か知らんがとにかく嫌な奴さ」
いかにも嫌そうな表情で言う老人にとってあの領主は本当に嫌な奴なんだろう。しかし私にはあの領主が不死な生き物にありがちな達観した口調も長い人生に慣れ切った素振りもなく年相応の時間を送っているような生気に溢れた印象を受けた。
「さて領主が戻ってくる前に仕事に戻るか」
老人はひまわり畑に入ろうとした。
「一人でやるなら私も手伝おうか」
私の言葉に老人は振り向いた。
「ほお、その骨だけの体で手伝ってくれるのかい。折れたりしないのか」
「ああ大丈夫だ。むしろ頑丈な方だよ」
「そうか、それなら助かる。来てくれ」
老人に誘われて私もひまわり畑に入った。
自分の背丈より高いひまわり畑の中をしばらく歩くと小さな川の見えるあぜ道に出た。
「あそこから水を引くのか」
私が訊くと老人は「ああ、そうだよ」と答えて草が茂る川原に歩いた。岸辺には既に老人が掘った跡があった。
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