枯れたひまわり畑<1>

 青空の下にひまわり畑が広がっていた。しかしひまわりはみんな枯れていた。花びらが散り茶色の丸い顔がだらりとうつむき、葉は力なく垂れている寂しい景色の横を私は歩いていた。

 枯れたひまわりの間から老人が現れた。

 「おや、あんたは暑そうな恰好をしているね」

 日焼けした薄着の老人が微笑んで話しかけてきた。

 「そうか、私は暑さも寒さも感じないから何ともないんだ」

 私が答えると老人は笑って「それは便利な体だな」と私を見て言った。

 骨だけの私には気温は感じなかったが、袖のない麻のような服から見える日焼けした細い腕や汗が流れている日焼けした老人の顔からきっとここは暑い季節なのだろうと想像がついた。

 「ひまわりが枯れているな。これはずっとこのままなのか?」

 私の問いに老人の顔から微笑みが消えた。

 「ああ、本当はずっと咲いているのだが水が切れてね。近くの川から水を引こうとさっきまで掘っていたんだよ」

 疲れた表情に変わった老人に「それは大変だな」と私は答えた。

 どこまでも広がる枯れたひまわり畑に水を引いたら元に戻るのだろうかと疑問に思いながら老人の様子を見ていると向こう側から馬に乗った人間が近づいてきた。顎に薄い髭が生えた精悍な顔立ちの男だった。

 「よう、調子はどうだ」

 紫色の服を着たその男が訊くと、

 「はい。今、水を引こうとしているところです」

と丁寧に老人は答えた。

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