白馬の森<3>
「しかし毎日毎日、女を抱いて飽きないか」
「別に思わないな。楽しいとも思わないが」
「ほお。それは本心かね。それとも見栄かね」
「俺たちが抱いている女は実体ではなく意識だからな。ああやって女は喘いでいるが体は冷たいのさ。体に入れても中は空洞みたいなものだから大して感じないのだよ」
「ああ、そういう事か……」
近くで交わり始めた別の女を見て私は納得した。よく見ると確かに肌に柔らかさがなく人らしさは感じなかった。
最初に見た二人は行為を終え、立ち上がって抱き合っていた。
「この森にはお前達しかいないのかね」
「ああ、ここは本当に存在しているのか誰にもわからない場所なのさ。だからお前だって迷い込んで来たのだろう」
クレイは少し不機嫌に答えた。
「それじゃ、俺は行くから適当に散策してくれ」
クレイはそう言って私の前をゆっくり歩いて行った。女と別れた男は白馬の姿に戻って辺りをうろついていた。私も特にとどまる理由はなかったのでまた歩きだした。
見上げても暗く青い空が木々の間から見えるだけで、それでもうっすらと森の中を照らしていた。しばらく歩いていると裸の女が近づいてきた。女の目はうつろで手を伸ばしてきたので私はゆっくり掴んだ。女の手は冷たかった。体の線はしなやかだが薄青い肌に生命感はなく作り物のようだった。私は黙って手を離すと女は白馬たちのいる森の奥へふらふらになりながら歩いて行った。
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