白馬の森<2>

 「どうだ。なかなか見ごたえあるだろう」

 自慢げに言うクレイに私は「別に」と答えた。

 「何だ、お前も男なら興奮したりしないのか。まあ骨だけだから勃起はできないだろうが」

 「本当、お前は下衆な馬だな。取りあえずこの状況を説明してくれ」

 私は呆れながら言った。相変わらず女の喘ぎ声が響いていた。

 「そうだな。簡単に言えばこの森には女が迷い込んで来るんだ。あの年頃の女ばかりだ」

 クレイの話をつまらなく聞きながら私は交わっている二人を見た。

 「あの女はこの近くから来たのか」

 「いや、あれは本物の姿ではない。意識の塊といったところだな。まあ本人は夢の中だろう」

 私は「ほお」と興味深く女を見た。全身が青白い肌の男が掴む女の肌は本物のようであり時折あげる声も生々しいのに意識だけの存在だというのか。それならあの男もまた意識だけの存在なのだろうか。またこの森が意識だけの世界だろうか……などと考えた。

 「お前の考えている事は大体予想がつくが、ここは夢の世界ではない。たたどういう訳か意識が具体化した女が訪れるんだよ」

 「逞しい男に抱かれる願望を持った女が訪れる魔性の森というわけか」

 「まあ、何とでも言えばいいさ。多分夢から覚めたらここで抱かれた事も忘れているだろう。何度も来る女がいるが前の事は全部忘れているよ。俺たちは初対面の振りをして抱いている」

 「夢で会える白馬の王子様か。まさか抱かれている相手が馬だとは知らないだろう」

 私は自分で言った事が少しおかしくなった。

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