らせんの町<3>

 「もしかして何か悩んでいるのかい?」

 しばらく黙っていた私に女が話しかけた。

 「いや別に。ただ考えれば考えるほど不思議だと思っていただけだ。これからもずっと生まれ変わるという事はこの町もずっとあり続けるのだろうね」

 「ああ、そういう事になるね。でも私は時々思うんだよ。もし町が消えたらどうなるんだろうってさ」

 「町から生まれているからな。消えたらそれまでだろう」

 私も女の口調に合わせて淡々と答えた。

 「本当に死んだら寂しいと思うのかねえ」

 「さあ、それはどうかな。案外嬉しいかもしれないな。死なないって退屈だぞ。退屈しのぎで私は旅をしているのかと思う事もあるしなあ」

 私はため息をついて言うと女は小さい声で笑った。

 「あんたもいつか死ぬ時が来るといいね」

 「ああ、そうだね。それじゃ私はもう行くから。どうもありがとう」

 礼を言うつもりはなかったが、私は軽く手を挙げて歩き出した。

 「さようなら。旅人さん。また来るといいよ。生まれ変わってもあんたの事は覚えているからね」

 女は抑揚のない声で言ってねじれた民家の方へ歩いて行った。

 上に下にねじれた道を歩いて町の外に出て振り返った。あちこちで盛り上がって形作っている町にとぐろを巻いた蛇の様な静かに息づく命を感じた。

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