らせんの町<2>
「生まれ変わるのとはちょっと違うかな。そうだ。ちょっと一緒に来てくれよ。もうすぐ三角屋根の旦那が死ぬんだ」
突飛な誘いだったが私は「そうか」と立ち上がって女と一緒に歩いた。
やはり横になっても逆さまになっても地面に落ちなかった。とても不思議な構造に私はどうなっているのか興味が湧いてきた。
「どうしてこの町はねじれているのか」
「ここの地面が大昔に大きく隆起してね、その時にここの石が勝手にねじれていったんだ。とても軽い石だからかね……私たちはここの石から生まれたんだよ」
「へえ、あなた達は町から生まれたのか」
「ああ、そうだよ。町から生まれて町に戻るんだ。ほら着いたよ」
女は立ち止まって指を差した。ねじれた三角屋根の家の前に男と思われる石の人が座っていた。
「もう死ぬのかね」
「ああ、そろそろだ。じゃあまた生まれたらよろしくな」
女の声に男は答えると体がボロボロに砂となって地面に散らばった。
「これが死ぬ事なのかね」
「ああ、あっという間だっただろ?みんなこうして死んでまた生まれるんだよ。この町のどこかでね」
「生まれたらあなたの事を覚えているのか」
「多分しばらくしたら私に会いに来るだろうね」
「短い人生を終えてすぐに生まれ変わるのは不思議だな。それが羨ましいかわからないが」
「フフフ、確かにあなたみたいに長く生きてその姿になるよりは若さを保っていられるけど何せたった十年で死ぬからね。どういう生き方が幸せだなんてわからないよ」
女は淡々と答えた。
「それじゃここに住んでいる人達はみんな遠い昔から知り合いってわけか。子供は生まれたりするのか」
「それはないね。祖先は子供を生んだみたいだけど今は誰も生まないよ。だからここの町の人の数はずっと変わらないんだ」
石の女は簡単に話していたが、私は困惑していた。永遠に生まれ変わりを続けるここの人々はそういう生き物なのか、それとも何かの呪いにでもかけられたのだろうか。しかもこの町はらせん状にねじり曲がっている。建物も道も何もかもねじれた町で永遠に転生を続けるこの人々にどういう意味はあるのだろうか。
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