第11話一時休息

 レイナを背負ってショッピングモール跡から離れることに成功した僕は走って見通しの良いバス停のベンチにレイナを座らせてバックから水を取り出して手渡した。


「ここなら休めるかもしれない。僕が見張っているから」


「いえ、大丈夫です。しばらくはモノノケが近づいてこないはずです」


「それってさっきの……」


 あの温かい不思議な感じ。レイナが力を発した瞬間にモノノケは遠ざかっていった。その力がまだ少し残っているのかもしれない。


「モノノケを遠ざける魔除けの波動です。今の私の力ではそう長い間使用することはできませんが、逃げ切ることはできます」


「成程ね。ヤスアキさんの言っていたモノノケに対抗できる力っていうのはこれかい?」


「その一つといったところです。私たち巫女は長い祈りと修業を行うことで神秘の力を身に宿しています。強大な力を持つ巫女ならば超自然現象を起こすことが可能です」


「火をおこしたり、落雷を落としたりできるってこと?」


「はい。ですが今の私にできるのは小さな火の玉を作り出す程度のことです。何か触媒があればもっと力が出せるのですが、なくしてしまって」


「それってどういうものなの?」


「揺らめく炎のような模様が刻まれた炎晶石という宝石のついたのペンダントです。恐らく山の中を逃げ回っていた時に落としてしまったのだと思います」


 レイナは手を胸の前にあてて悲しそうな顔をしている。よほど大切なものだったのだろう。

 僕は少し離れた場所で荷物をおいて見張りをしながら太陽の位置を確認した。昇った太陽は先ほどより高くなって気温が上昇してきた。心地よい風が西から吹いて塵が舞った。

 地図を広げて現在位置を確認すると、ショッピングモール跡から3kmほど離れた場所であることが分かった。もう少し休憩したら出発することにしよう。


「レイナ、あと少ししたら出発しよう」


「はい分かりました」


 僕もバックから水筒を取り出して水を飲んだ。常温の水は飲んでもあまりすっきりとせずおいしいとは言えなかった。こういう世の中であるため仕方がない。戦争前ならいつでも冷たい飲み物が路上に売っていて簡単に飲めていたらしい。戦後、瘴気に覆われた世界しか知らない僕には未知である。

 僕はバックを背負うとレイナに声をかけ、宇部市に向けて歩き出した。

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