第26話 裏切り


 サングラスをしてただでさえ怖い顔を髭でさらに怖くなっているいかつい男が何故か女物の着物を着ている。

 どう見ても蝶〇である。


「よく来たな。笑滅館にようこそ。女将の無残だ。歓迎する」

(((((((来たくて来たんじゃねーよ!)))))))


 心の中で目の前の男にツッコミを入れる全員。

 英吾も心の中でぼやく。


(ちくしょう! 名前で騙された!)


 裏をかかれたと嘆く英吾。

 だが一方で全員がホッとした。


(((((((でも、パワハラ会議よりはマシ)))))))


 惨殺よりもビンタ一発の方が遥かにマシなので、どこか安堵した空気が流れる。

 とは言え、それで安穏とはしていられない。


(問題は誰がビンタを食らうのか?だな……)


 英吾は考える。


(この場に方〇さんは居ないから……)


 誰が食らうのかはまるっきり予想がつかない。

 一方、泣きそうな顔なのは刀和だ。

 

(……僕かもしれない……)


 何となく自分に来るかもしれないと感じてびくびくする刀和。

 一報でチーボと嘉麻も気が気じゃない。


(さっきから予想を裏切ることが多すぎる)

(定石通りとは限らないからな……)


 自分に来るかもしれないと何とか回避する方法を考える。

 瞬も困り顔で考えていた。


(あたしは女の子だから殴られない……訳はないよね……)


 そんな甘い空間ではないことを重々承知していた。

 そして刹那は……


(さっきみたいにベロチュー路線にならないかな? できればもっと深く掘った内容になってくれないかな!)


 一人だけ違う期待をしていた。

 そして圭人は先ほどの続きを考える。


(考えろ! あと少しだ! さっきの言葉に何か意味があるはずだ!)


 必死で考える圭人。


(『思惑通り』『それ以外出来ない』『振り回された』『馬鹿にされた』『虐めみたい』『帰りたい』……)


 すでに言葉の羅列を整理まで出来ていた。


(これらが意味することは……)


 それを考える圭人の耳に女将の言葉が刺さった。


「諸君も知っての通り……この館では笑うのは禁止されている……」


(集中させろよ……)


 圭人は仕方なく女将の言葉を真剣に聞く。


「なのに何故か先ほどから笑い声がひっきりなしに聞こえた!」

(((((((当たり前だろ)))))))


 理不尽な言いがかりをする女将に怒りを覚える全員。

 土下座を崩さないまま怒りを抑える全員だが、女将はすごむように言った。


「この中に……館内で笑った奴が居る!」

(((((((全員だよ)))))))


 心の中でツッコミを入れる一同。

 そして女将は叫んだ!


「館内で笑っていたのは誰だ!」


 その言葉を聞いて英吾は考える。


(どうする? どうするのが正解だ?)


 必死で対処法を考える英吾。


(無〇様なら自分から光栄ですといえば良かったが、この場合は「「「「「「こいつです」」」」」」色んな可能性があるから……)

「あれ?」


 考え事の最中に後ろから声が聞こえたので後ろを振り向く英吾。

 そんな英吾に全員が指を指していた。


「「「「「「こいつがやりました」」」」」」

「裏切者ー!!!」


 英吾が泣きながら叫ぶ!

 だが、他のみんなは冷静そのものだ。


「ビンタだけだし」

「英吾なら耐えられるだろうし」

「お前なら耐えきる」

「ガンバ」

「ゴメン英吾」

「がんばってね」

「てめぇら後で覚えてろ」


 そう言って渋々立ち上がる英吾。

 すると女将はにやりと笑う。


「そうか……お前が笑っていたのだな……」


 そう言って女将が右腕を掲げると……


 メキメキメキメキ


 腕が膨らんで何倍もの大きさに変わり、腕だけで本体の倍以上の大きさになる。


「「「「「「「……えっ?」」」」」」」


 全員がそれを見て凍り付く!

 だが、それを許すような女将で無かった。


「こっちへ来い!」


 ガシ


 そう叫ぶとその大きくなった腕で英吾の頭を掴んだ!

 そのまま上へと掲げて、引っ張る女将。


「にょぁぁぁぁぁぁ!ぐへ!」


 女将の前へと連れ出される英吾。

 床へそのまま放り出された英吾に女将はにやりと笑いながら言った。


「罰として愛のビンタをしてやる」


 それを聞いた英吾は生きた心地がしなかった。


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