第24話 女将の挨拶
園芸場で何とか立ち上がる一同におっさん女将は言った。
「皆さまへ、女将がご挨拶したいとのことですので、どうぞこちらへ」
「挨拶ならそっちからこいよ」
英吾があきれ顔でぼやく。
とは言え、一事が万事これである。
もはや怒る気力さえ湧いてこない一同だが、圭人の目の光はまだ消えていない。
「英吾、次でお終わりと思うか?」
「何とも言えん……だが、次で終わりにして欲しい……」
疲れ果てた英吾だが、こちらもまだ負けていない。
圭人も必死で考えてみる。
「結局、何がやりたいんだろうな? この主ってのは?」
「……一つ気になったのは、俺達は主の思い通りに動いてるのか?」
「うん?」
英吾の疑問に圭人が不思議そうにする。
「何となくだが……俺達は勘違いした対応をしてるのかも?」
「どういう意味だ?」
不思議そうな圭人に英吾は首をひねる。
「振り返るべきは俺たちなのかもって思ってな……」
「なるほど……」
それを聞いて考える圭人。
だが、そこからわかることは一つだ。
「散々な目に遭ってるだけじゃないか?」
「痛い目に遭ってるだけだよなぁ……」
首をひねる英吾だが……
カチリ
圭人の中で歯車がかみ合った音がした。
(うん?)
何かが思いつきそうになる圭人。
すると仲居さんがある部屋へと促す。
「こちらへどうぞ」
そう言って中へと促す仲居。
促されるままに中へと入る一同。
「今度はまたシンプルな……」
校長が使いそうな大きくて豪華な机が前に置いてあり、一同がその前に並ぶ。
「これは……」
「多分、理事長とかそっち系のネタだな」
「ああ、あの系統ね」
ぼそぼそと話し合う一同。
「では頑張ってください」
そう言って仲居がドアを閉めた。
ピシャン
バタン
それと同時に反対側の襖が外れた。
「えっ?」
英吾がきょとんとするが、そのまま襖がどんどんと外れて行く……
バタンバタンバタン……
「えええっ?」
「一体何が……」
ベリベリ
一同が混乱していると天井までもが剥がれ始めた!
あらゆるものが剥がされて部屋は畳だけになってしまう。
だが、それだけではない。
一同が居たのは不思議な無限空間の旅館の中で空中に畳だけで浮いていた。
全員があっけにとられると……
ポロポロ
大きな机があった畳も下へと落ちる。
そして目の前にあるのは同じように空中に浮いている畳の部屋。
仲居がそちらの方に現れて言った。
「もうすぐ女将の無残が来ますので少々お待ちください」
それを聞いて全員が凍り付いた。
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