第21話 落ちない落下

 ビデオの女の子がこまった顔になるがビデオの主は全く意に返さない。


「良いねぇ良いねぇ! じゃあがっつり行こうか!」

「何で急に全裸監督っぽくなるんだよ……」

「一人アウト」


 テンションが上がり過ぎて尻を叩かれる英吾だが、全く気にしない。


「じゃ、良いよね?行くよ?」


 女の子の困った顔が段々近づいてきたその時だった!


『何やってるんですか!』


 地味なドレスを着た茶髪ショートカットの女の子が現れた!

 それを見て全員がきょとんとする。


「うん?」

「違うのか?」


 不思議そうな全員を尻目に慌てて弁明するカメラの主。


『違うんだ! これはメイドの身体計測をしようとして!』

『そんなことする必要がありますか!』


 ドレスを着た女の子にすごい剣幕で怒られるカメラの主。


「どうも尻に敷かれてるみたいだな英吾」

「だからあれは俺じゃないっての……」


 仏頂面で答える英吾。

 どうも思惑通りに行かなかったのでテンションが下がったようだ。

 すると画面の中の少女がとうとう叫んだ!


『言い訳無用! こっちに来なさい!』



 女性はそう言ってスタスタとカメラの主に近づいて……


にゅるん


 画面から出てきた!


「「「「「「「へっ?」」」」」」」


 完全に凍り付く一同だが、すぐに何が起きたかわかった。


「またこのパターンか!」


 同じパターンを食らった圭人が叫ぶ。


「食らってたまるか!」


 慌てて逃げようとする英吾だが……


ガシッ


 嘉麻がそれを押さえつける!


「ちょっ!」

「良いからもう終わらせようぜ」


 そう言って英吾を画面から出てきた女性へと押し出す嘉麻。


ガシィ!


 女性は差し出された英吾を満面の笑みで受け止めた!


 ガシュリ!


「いてててててて!!!」


 英吾の関節を瞬時に極めてにこやかに嘉麻にお礼を言う女性。


「ありがとうカマさん」

「いえいえどういたしまして」

「裏切ったな貴様ぁ! あとお前ら知り合いかぁ!」

「「全くの初対面です」」


 恨みがましく叫ぶ英吾だが、そのまま女性に引きずられていき……


むにょん


 画面の中へと入る。

 そして……


ドコスカバキィ!


 女性にボコボコにされていく英吾。

 それを見て全員が興奮しだした!


「すげぇ!筋肉〇体固めって出来るんだ!」

「ガ〇ジスブリーカーまでやってる!」

「あの子すげぇ強いぞ!」


 様々な超人プロ〇ス技を駆使する女性とそれを食らい続ける英吾。

 すると女性は難しい関節技を仕掛けながらジャンプして……


パリィン!


 窓ガラスを割って外へと飛び出した!


「「「「「「おおっ!」」」」」」


 場外乱闘かと思いきや、そうではない。

 どうも建物の三階だったらしく、女性は複雑な関節技を決めながら叫んだ!


『キョーサ流不殺技『業火』!』

「「「「「「すげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」」

「6人アウト」


 全員が尻を叩かれながらも感嘆の声を漏らす。

 女性が仕掛けた技はどう見ても『ナパーム〇トレッチ』だった。


「あのアタ〇兄さんの技を!」

「出来る人が居るなんて……」

「しかも女性で!」

「見てみて! 英吾の胸に何か出てくる!」

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』


 口々に叫ぶ面々と画面の中で落下しながら叫ぶ英吾。


バリバリバリ!


 英吾の服の胸部分を張り裂いて何かが浮かび上がってくる。


「見て! 胸に文字が浮かび上がってくる!」

「これはナパ〇ムストレッチだから多分『A』の字が浮か……」

「……じゃないね……」

「これは多分『鬱』かな?」


 英吾の胸に『鬱』の文字が浮かび上がって首を傾げる一同。


『助けてぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』


 泣きながら叫ぶ英吾を見ながら全員が不思議そうにしている。

 嘉麻が不思議そうにぼやく。


「……『A』ならわからんでもないけど、『鬱』はおかしいだろ?」

「『A』の時点でおかしいだろ?」

『誰かぁぁぁぁぁぁ!!!たすけてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』


 画面の中で叫び続ける英吾。

 不思議そうにぼやく瞬。


「と言うか、落ちるのにどんだけ時間かかってんのよ? 11秒以上経ってるわよ? デ〇オ様だってこれ以上時止められないわよ?」

「瞬。それを言うのは野暮ってものよ」


 刹那がそう言ってそれ以上考えるなと突っ込む。

 刀和が不安そうに言った。


「と言うかこれは流石に助けようよ……これを食らったら、いくら英吾でも確実に死ぬよ?」

「そうは言っても画面の中には入れんしなぁ……」


 そう言って嘉麻が画面に触るが……


にゅるん


 入れそうだった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 嘉麻は少しだけ考えたが……


にゅるん


 画面から手を出した。


「画面に入れない以上、どうしようもないな」

「今、入れただろ!」


 そう言って刀和が画面に入ろうとする。

 何だかんだ言いながら一番優しい彼は助けようとするが……


『専門家の指導の元、安全には万全を期しております。これを食らって死ぬことはおろか傷を付くことも無いのでご安心ください』


 そう言ったテロップが突然流れた。

 それを見て刀和が躊躇してしまうが、圭人はそれを見て刀和の肩をぽんと叩く。


「どうせなら食らう所見てからにしようぜ。お前も見たいだろ?」

「そりゃそうだけど……」


グシャァ!


 刀和の言葉と同時に、ようやく落ちた英吾が地面に叩きつけられる!


「あっ…………」


 同時に困った顔になる刀和。

 画面の中で英吾はうめき声を上げて手足を力なく倒す。


『仕置き完了!』


 そう言って女性がポーズを取ると、そのまま画面が暗転していき……


にょるん


 英吾が画面から出てきた。


「ごぼはぁ……」


 うめき声を上げる英吾に全員が駆け寄ったが……


「本当に傷一つない……」

「骨も折れてないし、打撲跡も無い」

「まさに『不殺技』」

「内臓も問題なさそうね」

「専門家の指導ってすごいねぇ……」

「流石だなぁ……」

「お前らなぁ……」


 感嘆の声を漏らす一同に怨みがましくぼやく英吾。

 すると……


ガラ


 再びおっさん仲居が現れた。


「演劇の準備が出来ましたので身に来ていただきたくおむかえに上がりました」

「休む時間ぐらいくれよ」


 嘉麻はうんざりした声でぼやいた。



詳細説明



茶髪ショートカットの女性


 『異世界に転移したので皇帝になってハーレム築こうと思います!』のヒロインの女の子。

 良妻賢母の女神キョーサの聖女で女神キョーサの権能『愛する人の浮気に対してだけ全能の力が使える』という特殊能力を持つ。


『異世界に転移したので皇帝になってハーレム築きたいと思います!』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891894421

 

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謎の物理法則


 ゆでた〇ご先生は間違ってない!

 間違ってるのは現実の物理法則の方だ!


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