第22話 彼らでなければいけない


 どこまでも続きそうな長い廊下を歩く一同。

 その前には黙々と謎のおっさん仲居が歩いている。

 前を歩く圭人がぼやく。


「何かわかったか英吾?」

「うーん……」


 額をしかめて考える英吾。


「とりあえず、ナ〇ームストレ〇チは痛かった」

「だろうな」

「よく二次元の世界に入りたいって言ってる奴いるけど、あっちの方が過酷だね」

「まあ、剣振り回して殺し合いする世界だからな。ついでに言うと二次元から出てき来るの駄目だったぞ」

「そうだな」


 どうでもいい話をする二人。

 すぐに圭人は気付く。


「その話はいらないだろう。この館についてだ」

「そうか二次元に出入りしたいってのは割と重要だと思うぞ?」

「どこがだ?」

「何となく」

「なんだよそれ」


 英吾の言葉に呆れる圭人。

 だが、英吾は考える。


「うーん……少しだけ気になったんだけど、何で俺らを呼んだんだろう?」

「……俺らを呼ぶ?」


 英吾の不思議そうな言葉に訝しむ圭人。

 英吾はさらに言葉を続ける。


「ここってスキー場だろ? 不特定多数の人が来る場所だから俺らじゃなくても良いのに」

「まあ、確かに……」

「何で俺達なんだろうな?」

「うーん……」


 二人して考えていると前を歩いているおっさん仲居がぼそりと呟く。


「これは独り言ですが……館の主にはあなた方でなければいけない理由がありました……スキーに来る人にはお願いできない事だったんです」

「スキー場なのにスキーに来る人では駄目?」


 英吾は不思議そうに尋ねるがおっさん仲居は答えない。


「皆さんには違う道を差し示してほしいのです」

「違う道?」


 どういう意味か思案する英吾と圭人だが、廊下に立札が出てきた。


「こちらでございます」


 そう言っておっさん仲居が中へと促す。

 中に入った英吾が不思議がる。


「演芸場ってわけでも無いな……」


 中はただの広間になっている。

 壇は作ってあるので演芸もできそうではあるが、今のところ緞帳が下りていて、中の様子がわからない。


「随分寂しいな」


 そんなことを言いながら中に入るチーボ達。

 全員が中に入ると同時に緞帳が上がっていった。

 上がっていって……


「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」


 全員の顔がウザそうになる。


「えーと……あれって……」

「鼓鬼だっけ?」

「確か『響〇』だっけ?」

「……その〇凱が何で寝てんだ?」

「それもふんどし一丁……」


 体から鼓を生やした謎の大男がフンドシ一丁で寝ていた。

 一同が戸惑っていると舞台袖から三人の小学生ぐらいの兄弟が出てくる。


「あっ!お兄ちゃん!あそこに『鼓の達人』があるよ!」

「遊んでいい?」

「ああいいよ。行っといで」


 兄弟は大男の寝ている横でじろじろと見ている。

 すると大男がぼそりと呟く。


「コインを入れてください」

「「「ぶっ!」」」

「三人アウト」


パァン!


 思わず吹き出してしまい、笑ってしまう三人。


「そう言うネタか……」

「俺の体で遊べってやつか……」


 口々にぼやく面々。

 すると兄弟は百円を取りだして……


「じゃあ入れるね」


 と言って……大男の股間に当てる!


ぐにゅ


「おう!」

「「「「「「「ぶふ!」」」」」」」

「全員アウト」


パァン!


 思わず噴き出した全員が叩かれる。


「そこに入れようとするか……」

「そこは出すところだろ……」


 口々にぼやく一同。

 だが、少年達は尚も大男の股間にコインを当てる!


「中々(ぶにゅ)入らないなぁ(ぶにゅぶにゅ)どうやったら(ぶにゅにゅにゅ)入るんだろう?」

「おう! おう! おおおうううううう!!」


 必死で大男の股間に百円を当てる少年とそのたびに喘ぎ声を漏らす大男。


「「「「「「「ぶふぉぉ!」」」」」」」

「全員アウト」


パァン!


 流石に全員こらえきれずに笑いだした。


「これは無しやわー」

「無理やって……」

「そろそろやめたげて……」


 そんなことを一同が言っていると、ようやく少年が大男に百円を渡す。


「さあ始まるぽん!」


 野太い声で大男がそう言うと少年達が「どれにしようかなぁ……」と言い始める。


「これ絶対紅蓮〇を選ぶだろ?」

「間違いないね」


 そう言って次を待つ一同。

 案の定、少年達は『〇蓮華にしよう!』を選ぶ。

 その瞬間、圭人が気付いた。


(そういや、この鬼って……しまった!)


「気を付けろ! 来るぞ!」

「「「「「「えっ?」」」」」」


 全員がきょとんとした瞬間だった。


「つぅよぅくぅ♪(ぽん)なぁれぇるぅ♪(ぽん)りぃゆうをしぃった(ぽん)……」


ぐるぅぅぅぅぅぅ!!!


 


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