第14話 無重力の異世界


「これで半分か……」

「先は長いな……」

「貴様らぁぁぁ……」


 うんざりした口調の英吾とチーボの足元で怨み声を上げる圭人。

 ケツにキックをまともに受けた圭人は悶絶して立ち上がれなくなっている。


「しかし、ひでぇタイトル詐欺だったな」

「ときめきも学園も孕ませもハーレムもエディッションすら無かったね」

「任〇堂基準だからいい意味でタイトル詐欺なんだろうな」

「違う詐欺で訴えられそうだけどね」


 嘉麻と刀和が口々にぼやく。

 英吾は悲しそうにぼやく。


「二次元から嫁が出てきて欲しいと願うのはやっぱダメなんだな……」

「画面から出た時点でリアルだからなぁ……結局リアルの女の子が一番ってことだな」


 しみじみ語る二人だが、まだ引き出しは残っている。

 再びじゃんけんを始めたら、今度は瞬が当たった。


「私かぁ……」


 机に突っ伏して嫌な顔になる瞬だが、先に進めないので諦めて開く。

 すると……


「……鍵?」


 番号が振ってある鍵で7番と書いてある。

 部屋の後ろの方を見ると7番と振られた小さなロッカーがある。


「……これ絶対に何か大きいものがあるよね……」

「確実にあるな」


 色々嫌がる瞬だが、諦めてロッカーを開いてみると……


「何これ?……DVDプレイヤー?」

「しかもブルーレイだよね?」


 ロッカーの中に入っていたのは備え付けのDVDプレイヤーだった。

 瞬が取り出そうとするが、既に配線が色々ついてて動かせない。

 すると、英吾が思い出したように言った。


「さっきの刀和のDVDじゃないか? あれも確かブルーレイだろ?」

「あ、うん」


 刀和もそれを聞いて思い出す。

 刀和は自分の引き出しの所に行ってDVDを取りだすが、こちらもブルーレイだった。


「これを入れろってことかな?」

「多分……刀和。入れてみてくれ」


 英吾に促されてセットする刀和。

 すると、再び教室前の黒板に画面が映し出される。

 映し出されるのだが……


「何だここ……」

「綺麗……」


 英吾が珍しく感嘆の声を漏らし、瞬がうっとりとした顔になる。


 画面に映し出されたのは海の中のような世界だった。


 魚が宙を泳ぎ、色とりどりのサンゴが地上を彩る綺麗な世界だった。


「何か上の方が青く光ってる……夜の海かな……」


 上の方では優しい青い光が差し込んでおり、それもまた幻想的な光景を生み出す一因となっている。

 そんな綺麗な世界だが、すぐに違和感に気付く英吾。


「……これ、海の中じゃないな。空気中だわ」

「……そうなの?」


 英吾の言葉にきょとんとする瞬だが、すぐに圭人も気付く。


「ほら、そこに竹が自生してるし、地上の木も自生してる。それに水としたら透明度が高すぎる」

「あ、ほんとだ……」


 圭人が指さした先を見て、うんうんうなずく瞬。


「多分だが、無重力の世界じゃないか?」

「無重力?」


 チーボが不思議そうに尋ねる。


「ほら、海中ってふわふわと歩くだろ? だからそんな感じで空気のある海中みたいな世界なんだろ? 正確には超軽重力って感じみたいだけど」

「ああ、なるほど」


 刀和もそれを聞いて納得する。

 だが、一方で少しだけぼやく。


「問題はこの風景がこれからの僕らに何の関係があるかだね」

「嫌だなぁ……」


 刀和と瞬が不安そうにしていると地上にある都市へと画面がアップしていった。


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