第11話 引き出し


 暗い顔になる7人の目の前にある机。


「絶対に何かあるよねこれ……」


 瞬の顔も憂鬱になっている。

 チーボが教室の戸に近づくと誰も閉めていないのにいつの間にか閉まっていた。


ガチャガチャ


 思った通りで開く気配が無い。

 刀和が不安そうにぼやく。


「これって……全部開くまで出れないってこと?」

「みたいだな」


 嘉麻が不機嫌に答える。

 英吾は諦めて椅子に座る。


「仕方ない。諦めて開くしか無いか……」


 そう言って英吾がグーを出すと全員がグーを出す。


「最初はグー!じゃんけんぽん!」

「俺か……」


 嘉麻が机に突っ伏してしまう。


「ごーごー♪」

「何で嬉しそうなんだよお前……」


 嬉しそうな英吾を睨みながらも引き出しを開ける嘉麻。


ガラ……


「……この系統か……」


 

 全員が嫌そうな顔になる。


「これって……かなーりランダムなやつよね?」


 瞬が困り顔になるが嘉麻は深呼吸して言った。


「誰が食らっても恨みっこ無しだからな」

「「「「「「OK」」」」」」

「じゃあ行くぞ」

 

 そう言ってスイッチを押す嘉麻。


 同時に全員が目を閉じる!


シーン……


 何の音もせず、何も起こらなかった。


「何だ空振りかよ……」


 英吾の言葉に全員がほっとして目を開けた瞬間……


「「「「「「「ぶふぉぉ!」」」」」」」

「7人アウト」


パァン!


 おもわず吹いてお尻を叩かれる全員!

 瞬が思わず立ち上がってしまう。


「何よこれ! 椅子越しにとんできたし! 通り抜けて叩かれるのアリなの!」

「物理法則無視し過ぎ! ちゃんと守れよ……」


 嫌そうにお尻をさする圭人。

 だが、問題はそこじゃない。


「あの一瞬でこれか!」


 英吾が思わずビビる。


 


 全員が互いの顔を見て慌てふためく。


「本家じゃとても出来ない芸当だな……」


 苦々しい顔のチーボ。

 目を閉じた一瞬で顔に落書きなどテレビでは出来ないだろう。

 そもそも本人に気付かれず出来るものではない。


 幸い、教室の後ろに水道があったのでそこで顔を洗う全員。

 ひとまず気持ちを落ち着けて全員が椅子に座るのだが圭人がぼやく。


「本家よりも厄介だな」

「怖くないだけでやることがでたらめすぎる」


 嘉麻も嫌そうな顔で同意する。


「これが後6回か……」

「耐えられるかなぁ……」


 お尻をさすって不安そうな刹那。

 流石に何度もたたかれたので痛い。

 

「ジタバタしても始まらない。次行くぞー。最初はグー!じゃんけんぽん!」

「僕かぁ……」


 負けて嫌そうに机に突っ伏す刀和。

 

「とりあえず開けとこ? 何か先に行けないんだし」

「意味がわかんないよ……」


 英吾の言葉にぼやく刀和だが、思い切って引き出しを開ける。


「こっちかぁ……」


 DVDが出てきて困り顔になる刀和。

 瞬が意地悪く笑う。


「これってタイキックコースよね?」

「何で嬉しそうなの?」


 刀和がジト目で瞬を睨んでから、教室の中で再生装置を探す。

 だが、困ったことに再生装置が見当たらない。

 

「どういうことだろ?」

「後回しにするしか無いな」


 そう言って圭人が次を促す。


「ほれ、続き」

「じゃあ、最初はグー!じゃんけんぽん!」


「あたしかぁ……」


 苦々しい顔の刹那。


「お尻が痛いからこれ以上食らいたくないよぉ……」

「せっちゃんガンバ」

「ううぅ……」


 困り顔のまま引き出しを開ける刹那だが……


ピシャン!


 即座に閉めてしまう。

 そのままダラダラと汗を流し始める。


(な、何でこれがここに!)


 刹那の豹変ぶりに全員がきょとんとする。


「どうした刹那? 中に何があった?」

「ちょ、ちょーっとみんな離れてくれる? 瞬以外に見られたくないから?」

「どうした? 下着でも入ってたか?」

「そんなとこ」


 刹那がそう言うと全員が机から離れてくれる。

 瞬が不思議そうに刹那の所に行く。


「どうしたの?」

「これ……」

「げっ! これってせっちゃんが描いた……」

「そう『滅の刃』……」


 そこにあったのは刹那の描いたBL本『亀滅の刃』だった。

 亀頭が云々という話になるのでそう言う名前にしたのだが……


(何でこれがここに?)

(わかんない……)


 そう言って戸惑う二人だが、突如として声が上がる。


『ふはははは!よく来たな刹那!』


 全員が振り向いた先には棚に飾ってあった日本人形だった。


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