第9話 強くなれる理由


 とりあえず、嘉麻は服を戻したのだが、訝し気に最後の男が入っている試着室を見る。


「おーい。まだかかってんのか?」

「……よし!これでOKだ!」


 そう言って試着室から出てくる英吾。

 それを見た瞬間……


「「「ぶふぅ!」」」

「三人アウト」


パァン!


 三人が思わず吹き出してしまう。


「色もの枠だったわ……」


 英吾のコスプレは……箱だった。

 箱から手足と頭を出してよたよたと出てくる英吾。

 圭人が苦い顔になる。


「嘉麻の後だとパンチ不足だな」

「そこまでウケないと逆に悲しくなれんけど?(なるんだけど?)」

「何で芸人気質なんだ?」


 そこはかとなく悔しそうな英吾に不思議そうなチーボ。

 何気なく圭人は箱に手をかけてみる。


「うん?これ開くのか?」

「そうだよ」

「どれどれ」


 そう言って全く遠慮なく箱を開いた圭人は……


「ぶふぉぅ!」

「一人アウト」


パァン!


 箱を閉めながら、そのまま崩れ落ちた。

 英吾が嬉しそうな顔になる。

 圭人は何とか立ち上がると箱に手を掛けたまま立ち上がる。

 瞬が不思議そうに尋ねる。


「何があったん?」

「これがあった」


 そう言って圭人が箱を開くと……


「「「「「ぶふぉぅ!」」」」」

「五人アウト」


パァン!


 それを見た全員が笑ってしまった。

 嘉麻がスタスタと英吾の方へと動いて……


パァン!


 頭を叩いた!


「なんつーパンツ履いてんだよ!」

「だって、これ置いてあったし!」


 そう言って英吾が胸を張って見せたのは……


 鱗〇さんが描かれたパンツだった。

 ご丁寧に丁度、〇滝さんの天狗面の所が股間にある。

 チーボが呆れて尋ねる。


「その鱗〇さんは何なんだよ?」

「強くなれる理由です」

「「「「「「ぶふぉぉ!!」」」」」」

「6人アウト」


パァン!


 英語以外の全員が尻を叩かれる。


「乙女の尻に容赦なさすぎ……」


 瞬が恨みがましくぼやく。

 すると英吾が少しだけ焦った。


「お、おい! 刹那が倒れたまま動かないぞ! 大丈夫か?」

「えっ? うわっ大丈夫!」


 慌てて刹那の竹を外す瞬。


「しっかりして刹那!(カポ♪)「英吾の〇滝が嘉麻の蜜〇に直撃ィ……」(カポ♪)問題ないみたいよ」


 すぐに竹を嵌め直す瞬。

 あらぬ妄想で鼻血を出している親友を床に捨てて立ち上がった。

 英吾が不思議そうに尋ねる。


「鼻血出して倒れてるのに問題ないのか?」

「ええ全く」


 さらっと答える瞬。

 怪訝そうな英吾だが、圭人がつまらなそうに声を上げる。


「とりあえず、これで着替えは終了だろう?さっさと次へ行くぞ」

「そうだな。みんな次の所へ行こうか?」


 そう言って英吾と圭人は廊下へ出て……その動きが止まる。


「何だこれ?」

「わからん」


 そう言って英吾と圭人は怪訝そうに廊下の先へ向かう。


「何かあったの?」

「わからん」


 瞬とチーボは不思議そうにしていたが、後ろから刀和の声が上がる。


「とりあえず、刹那も起き上がったし行ってみよ?」

「そうね」


 そう言って全員が廊下に出ると英吾と圭人は立札の前に居た。

 嘉麻が怪訝そうに尋ねる。


「どうした?」

「これ……」


 英吾と圭人の目の前にある立札にはこう書かれていた。


『着替え室』


 その立札の部屋には『鬼〇隊』の隊服が人数分用意されていた。

 そして同じように存在する試着室。

 隊服の前にA4ぐらいの紙が置いてあった。


「なんか紙があるな」


 そう言って圭人が中に入ってその紙を見た瞬間……


バシィン!


 即座に紙を畳に叩きつけた!

 慌てて近寄る他の面々。


「何が書いてあった?」

「これ見ろ」


 チーボが圭人に尋ねると仏頂面でその紙を見せる。


『その服では動きづらいでしょう。こちらに着替えてください』


「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」


 全員の顔に青筋が立った。


「「「「「「「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」」」


 全員が声を荒げて怒鳴った!


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