第8話 コスプレ


 豚の頭の中でかなり不機嫌になっていると外からでもわかるレベルだった。

 圭人の服は『亥〇助』のようだが、頭が豚になっている。

 割とがっしりした細マッチョの圭人によく似合ってはいるのだが、残念ながら滑っている。


「滑ったな」

「滑ったね」

「滑っちゃったね」

「うー……」


 笑いを取ろうとしているのだが、物事を斜に構えている圭人は笑いとは縁遠い。

 完全に滑った状況に圭人は豚の頭を脱ぐ。


「元が悪いから仕方ないだろ? 何なんだよこれ……」


バンッ!


 仏頂面の圭人は豚の頭を床に叩きつける。

 一瞬で険悪になる空気。

 刀和も困り顔になって辺りを見渡す。


「結局、これは何をやらせたいんだろうね……」

「わからねーよ」


 それを聞いて圭人も思案する。


「年末の特番をわざわざ俺達にやらせる意味はあるのか?」

「無いなぁ……」

「無いねぇ……」

「無いかな?」

「うー……」


 全員考えるのだが、答えは出ない。


「誰が見ている訳でも無し、俺達もそんな協力的じゃない。それなのにやらせようって言うのは意味が分からん」

「まあ、あの人らは芸人だからやるのに意義があるのであって、俺たちには無いよな」


 チーボも不思議そうにする。

 別にお金がもらえるわけでも無し、やる意義は彼らには無い。


「……英吾は何か気付いているっぽいけど……」


 そう言って瞬は英吾の入っていった試着室を見る。

 まだ何かごそごそとやっている。

 だが、圭人はぼやく。


「あいつは朧気に何か感じ取ってるだけだ。だから答えまでは知らん」

「確かに……」


 圭人の言葉に刀和が同意する。

 英吾はさらっと正解に導くタイプだ。

 言うなれば直感で答えに行きつくタイプなので、こう言った推理には役に立たない。

 また、圭人も話術で情報を探るタイプなので、相手が居ない場合は勘が働きにくい。

 そんなことを話していると嘉麻の試着室から声が上がった。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 その悲鳴を聞いて全員が凍り付く。

 慌てて試着室の戸を叩くチーボ。


「どうした嘉麻! 何があった!」

「どうしたもこうしたもねぇよ!」


 そう言って嘉麻は戸を開けて出てきたのだが……


「「「「「ぶふぅ!」」」」」


 それを見て全員が笑った。


「五人アウト」


パァン!


 5人の尻が叩かれるのだが、嘉麻は仏頂面になっている。


「これは無いだろう……」


 嘉麻の服は『甘〇寺蜜璃』の服だった。

 しかもそれだけじゃなく……

 

 


 豊かな谷間がいかつい嘉麻の胸に復元されていて全員が笑いをこらえている。

 瞬が笑いをこらえながら尋ねる。


「ちょっ……あんたどうやったのそれ……」

「知らん。全部着込んだ瞬間、膨らみ始めた」


 そう言って胸を開いて見せる嘉麻。


「「「「「ぶふぅ!」」」」」


「五人アウト」


パァン!


 再び笑ってしまった五人が叩かれる。

 

「ち、乳首がピンクって……」


 普段はクールな圭人ですら、ピンク色の乳首に笑いを堪えきれない。


「うーうー……」


 刹那が何か言おうとしているので瞬が竹を外す。


「だから何言ってるかわからないって(カポ♪)「今の嘉麻なら英吾が襲ってくれると思うからそれを」(カポ♪)関係ない話だったね」


 竹を嵌めて言葉を遮る瞬。


「刹那が変なこと言ってなかったか?」

「気のせいよ」


 嘉麻の言葉にそう答えて目を逸らす瞬。

 とは言え、嘉麻のおっぱいをぷにぷに揉み始める瞬。


「羨ましいわねぇ……私にも分けて欲しいわ」

「イチイチ揉むな!」


 そう言って嘉麻は瞬の手を叩く。

 そう言いながら嘉麻はちょっと思案する。


「お前がこの服着るか? 胸が大きくなるかもしれんぞ?」

「うー……でもこの服着ても膨らまなかったから無理だと思う……」


 そう言って

 嘉麻は自分の服を見ながらぼやく。


「そもそも肌が黒いからこんなコスプレは俺には似合わん。やるべきじゃない」


 嫌そうに顔を顰める嘉麻だが、全員が困り顔になる。


「そんなこと言っちゃだめよ?」

「そうだぞ?そもそも遊びなんだから好きなキャラになり切るのが大事」

「それ言い出したら日本人はアベンジャーごっこやるのもダメってなるし」

「うーうー」


 全員が嘉麻の言葉を否定して……


「「「「「ぶふぅ!」」」」」

「5人アウト」


パァン!


「お前らは面白がってるだけだろうが!」


 お尻をさする五人に嘉麻は大声で怒鳴った。




用語説明


リアルなオッパイ


 「東野」「オッパイ」「わらってはいけない」で検索検索♪



黒人のコスプレ


 以前、こういったことがニュースになったのであえて入れました。

 そもそもごっこ遊びなんだから好きなキャラになりきって楽しむのが大事であって、細かいことを気にしてはいけない。

 それ言ったら日本人は自前のファンタジー系のキャラに一切なれないので本末転倒である。


 再限度を目指すのは悪くないが、それを他人に押し付けるのはおこがましい。

 ネタ枠もあるから面白い。


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