第5話 第一の関門


「まあ、ルールはわかった。色々とオカルトチックではあるけど、年末のアレと一緒だね」

「まさか俺らがやることになるとは思わなかったけどな」


 英吾の言葉に圭人が皮肉気にぼやく。

 英吾は笑顔を浮かべながら言った。


「まあ、物は考えようだ。変に殺人鬼に襲われたり、幽霊に追い掛け回されるよりはマシだ。これぐらいなら笑い話で終わるぐらいだし」

「まあ確かに……」


 圭人も仏頂面で同意する。


「とりあえず大きな危険も無いみたいだから進んでみよう」

「そうだな」


 そう言って奥へと向かう英吾。

 すると途中にある部屋から大きな声が聞こえた。


「おおう! 良いよぉ! 最高だよぉ!」


 パンパンパンパン!


 お盛んに頑張っている声が聞こえた。


「「「……ぶふ……」」」


 おもわず笑ってしまう数人。

 すると廊下の天井から声が流れた。


「3人アウト」


 当然ながら影鬼が後ろから現れて……


 パァン!


「「「いってぇ!」」」


 笑った3人は尻を叩かれて悶絶する!

 大上が慌てて言った。


「やべぇ!こんな感じで色々あんのかよ!」

「先急ぐぞ!テレビじゃないんだからイチイチ付き合う必要は無い!」


 そう言って慌てて逃げようとする全員。

 すると中からこんな声が聞こえた。


「やっぱり君は最高だよゼンイツ」

「君こそ最高だよタンジロウ」


 何故か双方とも男の声だった。

 明らかにホモっぽい。

 全員が無視して通り過ぎようとしたその時だった!


 ズシャァァァ!


 刹那が凄い勢いでブレーキを掛けた!

 刹那はBLが大好きな腐女子である。

 襖の中で男同士でくんずほぐれつする映像が彼女の脳裏にくっきりと浮かび上がった!


「みんな先に行ってて! ここは私が食い止めるわ!」

「食い止めるものなんて無いでしょうが!」


 その場にとどまろうとする刹那の襟首を掴む瞬。


「私に任せて! あれは私の得意分野よ!」

「得意分野だけどあんたに任せていけないものでしょ!」


(この腐れ女子がぁ!)


 心の中で暴言を吐きながら無理矢理引っ張ろうとする瞬。


「なぁに。アレを見てしまっても構わないんでしょう?」

「構う! だからさっさと行くよ!」


 もはや完全に暴走している刹那を必死で止める瞬。

 異常に気付いた男子勢が慌てて戻ってくる。


「おいおいお前ら何やってんだよ……」


 圭人が呆れた顔で瞬に言った。


「離して! 私がみんなの為に犠牲になってここを食い止めるわ!」

「食い止めるものが何一つ見当たらんのだが?」

「なんか別のものでも見えてんのか?」


 嘉麻と英吾が口々に言う。

 するとそのすぐ隣の部屋からも声が聞こえた。


「さぁいらっしゃいネズコちゃん」

「シノブ姉さん……私怖い……」

「大丈夫。私が色々を教えてあげるから。カノオ。早くネズコちゃんをイカせてあげて」


 それを聞いた瞬間、英吾と嘉麻の脳裏にも襖の奥で女の子同士でくんずほぐれつする映像がくっきり浮かび上がった!


「「ここは俺が食い止めるからお前らは先に行け!」」

「「何も食い止めるもんが無いって今言ってただろうが!」」

「「なぁに。アレを見てから行っても構わんのだろ?」」

「「構うから早く行くぞ!」」


 そう言って留まろうとする英吾と嘉麻を必死で引きずって行こうとするチーボと圭人。


「ちょっとみんな何やってるの! 早くいかないと!」


 一人だけまともに対応する刀和だが、全員聞いちゃいない。

 その内、刹那を止める瞬の腕が弱まってしまった。


「しまっ!」


 後悔しても遅い。

 その瞬間、刹那は口から大きな息を吐きだして歯を食いしばった!


「雷の呼吸 壱ノ型!」


 バヒュン!


 一瞬にして先ほどの男たちの部屋の前まで移動する刹那。

 一方、英吾達も負けていない。


「「水の呼吸 参ノ型!」」


 グルグルグルグル!


「ぐっ!」

「ちぃっ!」


 二人とも体を大きく揺さぶってチーボと圭人を振りほどく!


「それ単に体を振り回しただけでしょ!」


 刀和がツッコミを入れるが、誰も聞いてくれない。

 英吾と嘉麻が先ほどの襖に手を掛ける!

 

「いざ行かん!」

「見てやろうぞ!」

「女同士の」

「「流々舞!」」

「「この状況で何考えてんだお前ら!」」


 チーボと圭人がツッコミを入れても彼らは聞かない。

 いつ如何なる時でもエロを忘れないのがこの二人である。

 そしてもう一人のエロを忘れない女も目の前の襖に手を掛ける。


「さあ見せてもらおうか! その尊き姿を!」


 そう言って英吾、嘉麻、刹那の参人が同時に襖を開けた!


 刹那は見た!


 パンパンパンパン


「ゼンイツとの餅つきは最高だよ! 合いの手がピッタリだ!」

「タンジロウのつき方が上手いんだよ!」


 二人の脂ぎったおっさんが餅つきをしていた!


 一方、英吾と嘉麻も見た!


「カノオ。早く8を出しなさい。ネズコちゃんがいけないでしょ?」

「カノオちゃん。早く8を出して……」


 三人の白豚系おばちゃんが7並べをやっていた。


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 英吾、嘉麻、刹那の顔が『無』になった。


 ガシガシガシ


 呆然となった三人の襟首を掴む圭人、チーボ、瞬の三人。


「「「引きずりの呼吸壱ノ型」」」


 そう言って引きずっていく三人に抗う力は彼らには残されていなかった。


「「ハイハイハイハイハイ!」」

「えー……まだ8を出さないのぉ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 ぽつんと残された刀和は少しだけ考えて……


 ピシャンピシャン


 襖だけ閉めてみんなの後を追った。




 用語説明


 ○○の呼吸〇の型


 学校で流行ってんだろうなぁと、鬼滅ブームの真っ最中に描きました。


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