休日:水都に来た日のオマケ
【ここからオマケ話】
「その叡智の塊でマシロの記憶って再生できるんじゃないのか?」
レオ君がそう言ったことに、マシロが少し考えた後にやってみようと言った。
赤玉を地面に落とすと、たくさんの木が生えてくる中、その中心に着物を羽織り、後ろの景色が見えるほどの薄い刀(けん)を持つ老人が立っていた。
辺りは白い雪が降り注ぎ、地面も樹木にも降り積もっている。
老人は一歩も動く気配はないが、雪はまるで老人を避けているかの様に降っていく。
それを暫く見続けていると、音も無く、動きもなく、時が加速したように老人は手に持っていた刀を横なぎに一閃をしたかの様にピタッと止めていた。
その数秒後、地面に積もっていた雪が空中に舞いながら樹木の間をすり抜けて流れていく。
老人の周辺だけまるで雪がつもっておらず、横なぎに止めていた腕はいつの間にか元の位置にともどり刀は鞘に収まっている。
さらに軽く腰を曲げ刀に手をかけた次の瞬間、シャリンという音だけが鳴り響く。
老人は構えを解くと、そのまま立ち去っていこうとするが、その前にふと顔をコチラに向けようとしたが、その前にこの動く模型が細かく刻まれて赤玉は霧となり飛散していった。
「⋯⋯これって、記憶を移しただけだよな?」
記憶の再現をしているだけが、それが破壊されるとは誰の目にも信じられるはずはなかった。
「それに、あの武器が気になります。あそこまで薄くされた刃なら斬れ味はすごいでしょうが⋯⋯あれを使いこなせる人がいるとは到底思えません。あの老人は何者なのでしょうか?」
レイは、即座に相手の力を見たが、その解析力でも到底測れるものではない事に驚愕していた。
「いや、マシロの記憶なら、あれはマシロじゃないのか?」
「その場合、あれ程の腕前をしている剣士ですので有名になっていてもおかしくはありません。生まれ変わりや別の世界から来た転生者などで考えてみても、いまのマシロ様と結びつくものがないのはおかしな話です」
レイとレオは、いまの映像に討論していく。
「ん〜いまの見る限り、分かったことがある」
「マシロ様、どんな事でしょうか?」
「あのおじいちゃんは⋯⋯」
ゴクリと周りの喉が鳴る。
「絶対に美味しいものを食べた事がないはず。美味しい物を普段から食べていれば、もう少し幸せ感をだしていてもおかしくはにゃい!」
『絶対、人生損してるよね』と、マシロは自身ありげにそう言い、いまの映像からは疑問が残る以外、何かが得れる事はないのだと確信に至った。
「それにしても⋯⋯あの剣はどこの国のものなのでしょうか?」
レイは、どうしてもあの透き通るほどの美しい刀がどうしても気になり、ぼそりと言った。
【白雪だよ】
「え? ⋯⋯いまのお声はマシロ様ですか?」
「ん〜? なにが〜?」
「いえ、勘違い⋯だったみたいです。申し訳ございません」
先程の声は確かにマシロの声だったのだが、まるで初めて聞いたような澄んだ声であった。
マシロと結びつくものが無いと言ったばかりだが⋯⋯『白雪』といった事が、まさしく『その』繋がりではないかと思ったが、口に出す事はせずにレイの胸にしまっておくのであった。
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