宇宙のカナタ
佐々木実桜
エイリアン?
最近気になる子がいる。
四年生になって初めて同じクラスになったカナタくん。
漢字は苦手だからちょっと分からない。
カナタくんは、入学する直前に引っ越してきて僕らの町にやってきたおうちの子だ。
こんなとこ来てもなんもないのに。
友達が言うにはカナタくんは都会の人らしくて、僕らの当たり前はあんまり分からないんだって言ってた。
変なの。
カナタくんは綺麗な顔をしていて、仕草も洗練?されてかっこいいってクラスの女子が言ってた。
(いいなあ、モテモテだ)
一回ガキ大将でいじめっ子のドンがカナタくんのこと生意気だっていじめようとしたことがあったけど強気なみちこちゃんが止めてたこともあった。
ちなみに、ドンはあだ名で本当の名前はよしおくんなんだけど、みんなはマフィン?マフィア?のボスって意味でドンって呼んでるんだ。
最初は僕もそういう意味で呼んでたけど、姉ちゃんがマヌケって意味だよって教えてくれたドンキーの略として今は呼んでる。バレたらいじめられちゃうけど、心の中だからバレることはないはずだ。
カナタくんの話に戻らなきゃ。
カナタくんは、なんでもできるんだ。
腕相撲も実は強いし、かけっこだって1番はやい。
僕は全然分からない問題でもすらすら解いてて、こないだなんかあくびまでしてたんだ。
あ、なんでもじゃないかもしれない。
カナタくんは絵がすごく下手だった。
自分の似顔絵かいてよって言ったら、タコみたいな、宇宙人みたいな絵を書いてたから。
「カナタくん全然違うじゃん」って言ったら
「僕の似顔絵でしょ?何も違わないよ」って少し怖い顔で言ってた。下手って思ってるの伝わっちゃったのかなって思って、ごめんねっていったらいいよって言ってくれたけど、多分ちょっと怒ってたな。
家に帰ってから母ちゃんにこんなことがあったんだって言ったら面倒なことは起こさないでよって言われちゃったから、姉ちゃんにも言ってみたら
「もしかしたらその子、宇宙人なのかもね」って少し笑いながら言われた。
「そっか!だから怒ってたのかな!ありがとう姉ちゃん!」
そうか、本当に自分の似顔絵を書いたのに違うって言われたら嫌な気持ちになっちゃうよね。
早く謝りに行かなきゃ。
「待って、本当に信じちゃったの?!ちょっとたっちゃん!、行っちゃった…まあいっか!」
「カナタくん!」
「…たつみくん、どうしたの?」
色んなところを探し回って、小学校の近くの公園でやっとカナタくんを見つけた。どうやら一人みたいだ。
「あのね、僕謝りたくて!あと聞きたいこともあって!」
ハァハァ言いながら必死に言いたいことをまとめる。
「ゆっくりでいいよ」
「あ、あのね、僕、今日図工の時のこと謝りたくて。カナタくんにひどいこと言っちゃったんだよね。本当にごめんなさい。」
「あぁ、だいじょ「あれが本当のカナタくんなんだよね、あの、カナタくんって、宇宙人なの?」え?」
「だから、カナタくんって宇宙人なの?って」
「…何を言ってるんだよたつみくん、そんなわけないじゃん。宇宙人なんていないんだから」
「そっかあ…宇宙人いると思うんだけどなあ」
「まあまあ、で、図工の時のことなんだけど、僕はあんまり怒ってないよ」
「そうなの?よかったあ」
「でも、ちょっと傷ついたから罰ゲームしてもいい?」
(罰ゲーム?なんだから分からないけど、カナタくんのこと傷つけたってみちこちゃんにバレたら怒られちゃう!)
「いいよ!何するの?」
「うなじに落書きさせて?帰ったら誰かに落としてもらえばいいから」
「…うぅ、分かったよ、はい。」
僕は少しだけ髪が長いからうなじはあんまり見られない。
カナタくんはどこから取り出したのか見たことのないペンを持って僕のうなじに何かを書き出した。
「何書いてるの?」
「秘密」
あとで姉ちゃんに拭いてもらうついでになんて書いてあるか教えてもらおう。
「はい、できた。ありがとうね」
「あ、うん!僕こそごめんね!」
「いいえ、じゃあねたつみくん」
「うん、バイバイカナタくん!」
そうしてカナタくんは帰っていった。
「はっ!早く消してもらわなきゃ!」
「姉ちゃん姉ちゃん!」
「ん?あ、たっちゃん帰ってきたの?さっきの話冗談だから真に受けないでね」
「ん?なんのこと?まあいいや!友達にうなじに落書きされたから消して!」
「わかった、貸してみ」
「はい!」
「なんにも書いてないじゃない」
「え?確かに書かれたんだけどなあ」
「汗で落ちたんでしょ、早くお風呂はいってきなさい」
「はーい」
僕、汗かいてないんだけどなあ、変なの。
今日は少し焦った。
「まさか、あのバカに勘づかれそうになるとは」
なんとか乗り越えられたが、危ないところだった。
たつみくんは、少しどころかだいぶ抜けてて不思議な子だ。理解するのが難しい。まだドンの方が分かりやすかった。みちこちゃんのことが好きで俺に絡んできただけだから。
しかし収穫はあった。
めったにうなじを出さないたつみくんにも、俺の種を埋められた。
俺の種は、地球人のうなじと呼ばれるパーツに母星の字を書くことで埋められる。
それは人には見えないし、実際は見えたら近づかなくても書くことは出来る。
埋められたものは、誰かと接触すればするほどその種を撒き散らすことになる。
まずはこの町から、俺は俺の種を撒き散らすのだ。
さて、次は誰に埋めるかな。
宇宙のカナタ 佐々木実桜 @mioh_0123
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
しょうか/佐々木実桜
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます