4-1
試験が終わって一週間後の土曜日。再び、先生の所に行った。あの日と同じように、電車に乗って先生の住んでいる町に行く。待ち合わせ場所として、原っぱが広がる公園に指定された。そこで、先生は待っているという。
公園に向かう最中、河川敷で遊んでいる子供たちを見かけた。風景の雰囲気は、この間と同じだ。とても長閑な風景だ。公園に近づくにつれて、心臓の鼓動が速くなってくる。目的地に着いた。小さな子供が、何かを探して楽しんでいるのをベンチに座って眺めていたのが……、
「雅翔?」
ベンチに座っている男性が、こちらを向いた。雅翔だ。
「橘」
「私ね、雅翔に言いたいことがあって」
「言いたい事?」
バッグから、大きな封筒を取り出して、その中から一枚の紙を出す。
「雅翔。私、頑張れたよ」
結果は、合格。あのあと、すぐに報告したかったけど時間的に行けなかった。だから今日、報告をしに来たんだ。
「橘、お疲れ様。よく頑張ったな」
「ありがと」
雅翔は、すごく優しく慰めてくれた。
「卒業式、いつだっけ?」
「来月の十二日だよ」
「そっか」
それだけ聞いて、あとは何も言わなかった。
そこに、子供たちが寄ってきた。
「ねえ見て! 見つけたよ!」
女の子が私たちに差し出したのは、可愛い四葉のクローバー。
「すごい! 見つけたの?」
「うん! これ、あげる!」
「いいの?」
女の子は、クローバーを差し出して、それを受け取ると、バイバイって可愛く手を振っていってしまった。
「クローバー。可愛いな」
「可愛いね」
今日も、少しデートをして、私は帰った。
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