2-3

文化祭が終われば、改めて進路に向けて真剣になる。もう二学期の中盤に入った。

「美波、大学とか決まった?」

 昼休み、佐奈とそんな話をしていた。

「美大に行く予定だよ」

「そっか!」

「うん。やりたいことが見えてきて、自分は絵を描きたいなって」

「なるほどね。頑張れ! 応援してるから」

 親友っていいな。自分の夢を応援してくれる。

 教室に戻ると、クラスの女子たちが私のほうを一斉に向いた。みんな、どうしたんだろうってぎもんが浮かんだ。でも、その疑問はすぐに解決することになる。

「橘、職員室」

「ん?」

「担任が呼んでたよ」

 来栖くんからそんな話をきいて、職員室に向かった。

「失礼します」

「橘、ちょっといいか?」

 担任に呼び出されて、空き教室に行った。

「橘。正直に話してほしい」

 その一言で、一つの確信がついた。

 桜庭先生とのことだ。ずっと隠していた秘密が……、バレてしまった。

 その日の放課後、私は数学準備室に行った。先生に会うため。担任に聞かれたことは、やはり先生とのことだった。でも、頑張って誤魔化してすり抜けた。私たちの関係を終わらせたくないんだ。大好きな人と離れるのは嫌だ。教師と生徒だからダメ。そんなの分かってる。でも……、私は先生のそばに居たいから……。

 数学準備室に行くと、中に人がいる気配がない。先生はどこにいるんだろう。

 あ、もしかして……。

 職員室に行くと、先生の姿は見えない。どこにいるんだろう。どうしても先生に会いたくて、教室を歩き回った。そのとき、偶然にも担任の先生に会った。

「橘、何してるんだ? 早く帰りなさい。桜庭先生なら、帰ったよ」

 帰った? そっか。なら、仕方ないか……。

「はい、わかりました。さようなら」

「はい、さようなら」


 家に帰って、先生にLINEをしようかしないかすごく迷った。先生とのトーク画面を開いては閉じての繰り返し。結局送るのはやめて、スマホの画面を閉じた。

 ご飯の時間になってリビングに行くと、いつもと変わらない親の姿があった。ごく普通の夜のリビング。でも、その中で、私の心は変わっていた。ご飯を食べてる時も、ずっと先生のことでソワソワして親にも心配されて。でも、大丈夫だよの一言で片づけて、それ以上心配されないように頑張った。

 食器を片付けて部屋に戻ると、新着メッセージの通知が。それだけでも、嬉しくなって心臓がどうにかなりそうだ。LINEを開くと、先生からスタンプが送られていた。コーク画面を開くと、思いがけないメッセージが来ていた。

『美波、暫く連絡とるのやめよ。学校で会えるし、二人で会うのもやめよう』

 胸が苦しくなった。と同時に、なんで? という疑問が浮かんだ。私は、すかさず電話をした。

「先生!」

 先生はすぐに電話に出てくれた。私は、喧嘩腰にならないようにゆっくり話した。先生も、それにこたえてゆっくり話してくれた。だけど、

「もしかして、他の先生に言われたとか?」

 そう聞くと、少し黙ってしまった。やっぱり、先生も……。

「でも、私は誰に何と言われようと先生が好き。大好き」

 ありがとう。の一言で終わってしまった……。


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