闊達の図書部 続続々


「でも妹ちゃんがいるんだし分かるかなって思ったんだけどね」

「妹がいても化粧品の話なんかしませんって。姉妹であればそういう話もするかもしれませんけどね」

「それもそっか」


 兄妹なんてもんは会話すらほとんどしない所もざらにあると聞く。

 その点うちは、化粧品で盛り上がった事は一度もないけれど、二人で買い物に行ったりなんかもするし、家にいる時はゲームを一緒にしたりもする。

 最近はここ図書部に顔を出しているから、一緒にいる時間は少なくなっているかもしれないが、割と仲は良いのかもしれない。

 だから、口も聞いてくれないとか想像しただけで涙が出そうだ。

 妹よ、兄を避けないでいてくれてありがとう。


 当たり前に過ごしている事でも、ふと考えてみると実は凄い大切な事だと気付き、心の中で感謝を告げた。

 そして、改めて席に座ろうとした時だった。


「唯ぃーッ!!お待たせしました!舞は掃除当番という立ちはだかる壁を押し除け、あなたの元に戻ってきましたよ!」

「ッ!?」

「舞さん!部室に入るまでの勢いが凄すぎて、廊下で二人ほど弾き飛ばしましたよ!」


 いつもの様に舞先輩が部長に飛び掛かって行ったのは見えた。

 それから少し遅れて、部室の入口辺りからレイラの声がする。


 ここの校舎はコの字に建てられていて、北と南の校舎に普通教室があり、図書部の部室は

 残る西側校舎二階の真ん中辺りの一室にある。

 レイラと栗花落、俺達二年生は南側から、舞先輩達三年生は北側から図書部へ向かうので、反対方向から来たレイラは廊下にいた人や、俺みたいな被害に遭わなかったのだろう。


「サリュン!レイラちゃん、今し方三人目であろう被害者がそこに出来上がったよ。そして、舞ちゃんは今すぐ廊下で迷惑をかけた人達に謝って来なさい」

「うぇー、唯と私の間にいる方が悪いんですよ」

「舞ちゃーん?……早く行きなさい」

「イ、イエスッ、マム!すぐに謝ってきます!」


 部長の形相からこれはやばいと察し、舞先輩はビシッと敬礼を決めて、すぐさま廊下へ飛び出して行った。

 その先輩に跳ね飛ばされた俺は、うつ伏せになりながら部長に尋ねてみる。


「部長、俺への謝罪の催促はしてもらえないんですかね?」

「ケイ君にとっては挨拶みたいなもんだから別にいいじゃん」

「それもそうですね、考えてみたらいつもこんな扱いですもんね。……って納得する訳ないでしょうがッ!」

「おぉう、ノリツッコミとかテンション高いなー」

「……化粧はしてないけどノリが良い」

「うまく言わなくていいわッ!!てかそのネタまだ有効だったんかい!」


 カチカチとボタンを操作してゲームをやりながらも俺を弄ってくる栗花落。

 まったく、弄るのはコントローラーだけにしてくれ。


 ……やかましーわッ!


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