闊達の図書部 続々
「やぁー媛凪ちゃん、サリュン!」
「……さりゅんです、部長さん」
ソファーに寝そべったまま、手をヒラヒラさせる部長と挨拶を交わした栗花落は、部室の奥に向かいテレビの電源を入れた。そして、いつものようにテレビ台からゲーム機を取り出して準備を始めている。
ここには最新のポータブル機から、レトロなコンピューター物までが揃っていて、栗花落が持ち込んだ物以外にも、元々この部屋にあったのも合わせて、かなりのコレクションとなっていた。
その一角からディスクを手にしてゲーム機にセットする。
どうやら、某有名RPGを進める気のようだ。今日の図書部は明さん率高いなー。
部長の方はソファーから、彼女の特等席であるフカフカのクッションが置かれている席に移動している。
鼻歌まで歌っているところを見るに、栗花落が来たことで先ほどまでの空気はリセットされた様だ。やはり元気の良い部長が一番である。
「ケイ君」
部室の入口で突っ立て二人を眺めていたら部長に声を掛けられた。
机の上を指で二度叩き、シャフ度をつけてだ。
「ぼぅっと突っ立ってないで、私達にお茶を入れてくれてはどうだね?」
「急に態度が悪い!まぁ、入れるのはやぶさかでもないんですけど、茶葉やお菓子はいつもレイラが持ってきているので、ここにはないですよ?」
いつも自然とティータイムが始まる為、部長は給湯室にティーセットが置いてあるのだと思っていた様だがそうではないのである。
実は持ち主の子が部室に来る時に毎回転がしているキャリーケースの中身にそれらが入っているのだ。
以前、その高校生とは思えない荷物に、部室の棚に置いておけばいいのではと提案してみたけれど、彼女曰くいつでもティータイムが出来るように持ち歩いているのだと言う。
流石イギリスの血が入っているだけのことはあると思ったものだ。多分そこまでするイギリス人はいないと思うけれど……
お茶を用意出来ない事情を述べると、部長は口を尖らしてむぅーと唸っている。
そんな顔されても無いものは無く、立っているとまた何かを頼まれそうなので俺も席に着こうとした。
「……役立たないモブ」
「おいやめろ!自分で言う分にはいいが、人に言われるのは悲しいぞ!」
クラスメイトの辛辣な言葉が飛んできて俺はダメージを受けた。
確かに栗花落みたいに目立つ生徒ではないので、そう言われても仕方ないかもしれないがはっきり言わないでほしい。
モブはモブなりに分かっているのだ。
これ以上の攻撃は死人が出てしまう。
そうならない様に自分のHPを確認していると、すぐさま追撃を受ける事となる。
「騒がないのボブ」
「モブからちょっと昇格したけど!」
会心の一撃にならなくて良かった。
こうゆう時、部長はすぐに乗っかってくるタイプだから、身構えていて良かった。気を抜いていると、偶にとんでもない豪速球が飛んで来るからな。
「ケイトもボブも化粧品ブランドで共通してるからいいじゃん」
「男子高校生に化粧品ブランドの話をされても共感できませんよ!」
例え知ってたとしても頷く訳がない。
ボブには悪いが俺は結翔と言う名前を気に入っているので、ここはお引き取り願う。
そんな俺の言い分に不服そうな顔をして、部長は言った。
「イケメンのケイ君なら分かると思ったのに」
「……うん。韓国のアイドルみたいに綺麗な顔なのに」
「リップサービスがすぎる!」
それほど良い顔であれば普通に高校生をやっている訳がない。
これは悪ふざけ発言であり、現に二人してクスクス笑っているのが証拠である。
まったく、本気にしたらどうする。
冗談と分かっていても、世の男子はちょっとぐらい間に受けてしまうものなのだから、不用意な言動はやめて頂きたいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます