闊達の図書部 続
「部長?」
自分の行動が心配になり、恐る恐る声をかけてはみたが反応は返ってこない。今日はまだ舞先輩も栗花落も部室には来ていないので、二人だけのこの雰囲気はなんだか気まずい。
こうゆう時、舞先輩なら間に入って場を戻してくれるのに。
あの人のように、上手いフォローは出来ないけれど、お菓子で気を引いてみるのはいい案かもしれない。そう考えたが、都合よくそんな物が懐から出てくるはずもないし、かと言ってこの部室にスナック類を備蓄する習慣もない。
なぜなら、いつもここの給湯室でお茶請けを作って提供してくれる部員がいる為である。
……快適なサービスが仇となった。
お菓子以外の方法はないものか。
横になって背を向ける彼女に視線を向けながら、この状況の解決策を色々模索していると、その背中から小さく優しい声が耳に届いてくる。
「ケイ君はもう……妹ちゃん以外と接しても大丈夫そうだね」
あぁ、部長はそっちの方を心配してくれていたのか。
いつも自由奔放で振り回される事が多いが、それは自分勝手な行動とは違い、いつも誰かの為に動いている結果なのを、この約一年の間見てきた。
だからこそ、今こうして俺はここにいるのだろう。
「そうですね……部長が俺に居場所を作ってくれたお陰です」
「そっか、それはよかった」
彼女のその言葉に胸の中が暖かくなるのを感じる。
あの時、俺を引っ張り上げてくれた部長には本当に感謝しかない。
放課後、部活に顔を出すのを強制している訳でもないのに、なんだかんだ毎日ここへ来ているのは、そういった気持ちがあるからなのだろう。
相変わらず背を向けたまま、顔をこちらに向けてくれないけれど、部長の笑顔には力を貰ってばかりだ。
だから俺はこの恩をかえーー
「ぐぁふッ!?」
感慨に浸っていると、腰に何かが追突した衝撃を受け、発した事のない声が出てしまった。
漫画の人物だけがこんな声を出す物だと、少し馬鹿にしていたが、実際に自分の身に起きてみると、それは間違いであったと分かる。
驚きと痛みが合わさるとこんな効果が起きるとは知らなかった。
ありがたくもない発見をした所ですぐさま振り返ると、栗花落の頭がそこにある。
「……シリアスっぽい顔はこの物語にいらない」
「何目線ッ!?」
これは現実に起こっている事であって、読者視点なんてないのだからそんなダメ出しはやめて欲しい。
それにさっき漫画を肯定した所なので話がややこしくなってしまう。
そこの所をもうちょっと考えて発言してもらいたいものだ。
「……天晶の希望には応えられない」
「今、俺の心の声と会話しなかった!?」
「……してない」
「実は普段俺が考えている事が読めているとかない?」
「………………ん?」
「その間がこえーよ!!」
そんな超能力みたいなものは創作の中だけにしてもらいたい。
ほんと、ミステリアスビューティーに相応しいよ、こいつは。
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