闊達の図書部
「今日もまた一番乗りですか?部長」
「当たり前じゃん!部長たる者、部員達の先を行かねばならないのである!」
「あーはいはい、で?本当のところは?」
「いま読んでる漫画が良いところなのだ!」
願いが叶う7つのボールを集めるバトル漫画を読みながら、志の高い台詞を宣うJK。
だけど今の状況では完全に小学生にしか見えない。
そろそろ中島が野球を誘いに来るんではないかと思うほどだ。
そもそも【図書部】なんてインテリっぽい響きであるがその実、活動もしないで部室でただ単に皆んなが好き勝手過ごしているだけだ。
漫画やライトノベルを読んでいる者やゲームをしている者、料理を行う者と実にバラバラである。つまりは暇な人達の集まりに他ならない。
【維新科】なんて大層な名前を付けて、去年の秋頃に新しく分科しているが、やはり何かしらの変革を起こそうなどという野心はないのである。
それは、このソファーで寝ながら堕落している部長を見ればわかる事だ。
あーほら、ブレザーを枕にしちゃってるし。
「夢中になるのは分かりますが、ちょっとだらしないですよ?そうでなくても普段だらだらとした活動しかしていない部なんですから、上着くらい掛けてから読んで下さい」
脚をバタバタさせていた為、スカートがめくれそうだったので注意してあげた。すると、その脚の動きを止めて、読んでいた本の横からチラリとこちらを見て部長は言い放つ。
「唯さんを……いじめるなーっ!!!!!」
あっ、戦闘力が上がった。
絶対あのシーンの所だな。俺も男だし一度は読んだ事があるので分かる。世代ではないけれど、再放送とか新劇場版とかもやってるからね。でも……
すぐに真似しだすとか子供か!
いや、見た目子供っぽいけども、それじゃ見たまんまですよ?
でもその無邪気なところが、部長の良いところでもあり悪い所なんだよなー。いつも振り回されるこっちの身にもなってほしい。
「……部長ってかわいいですよね」
「ふぇっ!?ど、どうしたのさ急に!?」
「思った事がつい口に出てしまいました」
「そ、そうなんだ……何処のあたりが?」
この流れでそう問われれば、どの辺りなんて一つしかないだろうに。でもなぜが真剣な眼差しで見られているので、口に出す事は躊躇われるが言わせてもらおう。
「なんか子供みたいで」
「うるさいよっ!ケイ君のくせに!私、歳上だし!高三だし!もう歴とした大人だよ!」
ほらやっぱり怒る。
こちらはフリに乗り損だ。
そもそも、部長が笑いを演出するなんて無理なのである。素の櫻井唯こそが正義なのだから。
だから、そんなに頬をプックリとさせないで下さい。
「あーそうですねー、すいません」
謝ったはいいけれど、少し棒読みだったのがいけなかったのか機嫌が戻らない。
その様子があいつとダブってしまったのか、俺はいつもの要領で無意識に部長の頭を撫でてしまった。
部長の事だから子供扱いを止めろとか言って怒られそうだ。その時は無限ループになりそうなので気持ちを込めて謝ろう。
そう決めて彼女の表情を伺おうとしたのだが、
「〜ツ!?」
何かが気に障ったのだろうか、その顔を見る事は叶わなかった。
結局、怒られはしなかったが、代わりに無視する様に背を向けて漫画の続きに戻ってしまった。
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