心霊スポット
A
第1話
「え~、絶対無理~!!」
梨花は目を見開いてそう言った。
「私も嫌だ~」
梨花に同情したのは、紗江。
「急ににどうしたんだよw心霊に興味あったのか?」
唯一楽しそうに笑っているのは、一樹。
「実はちょっと興味...なきにしもあらずって感じ?笑」
そう言って笑う、俺、亮太。
俺達4人は、小学校からの幼なじみで、特に付き合ったりとかしたこともない、本当に純粋な友達関係だ。多分。無事全員同じ高校に入学でき、3年生となった今、俺は思い出づくりのために、みんなで心霊スポットに行こうと誘ったのだが、反応は予想通り。まあなんだかんだ言って、行く流れになったんだけど(笑)
「どういうとこなの、そこ」
怖がりながら梨花が聞く。
「古い空き家なんだけど、昔、そこで女性が自殺したんだって」
「よくあるのやつ...」
紗江が目を細めて言う。
「で、なんで自殺したんだ?」
やっぱり唯一楽しそうな、一樹。
「なんか、結婚を目前にしてた彼氏がいたらしいんだけど、籍を入れる直前に殺されて...それで。首吊りっぽい。んで、遺書があったんだけど、(彼を殺したやつを、私が代わりに呪い殺してやる)って書いてたらしい。だからその家に入ると、呪い殺されるっていう噂。」
「マジ無理~!!」
そう叫んで、紗江に抱きつく、梨花。
「で、なんでまた、行こうと思ったわけ?」
一樹が聞いた。
「こっから近いし、なんか面白そうじゃん?たまにはこういうのも良いかもなぁ~って」
「そこ、本当に大丈夫なの?」
紗江が心配そうに言う。
「大丈夫大丈夫w俺が保証する。」
そう俺が言うと、
「よし、俺は乗った!2人も行くよな...?」
一樹が立ち上がって、2人を見る。
「もう~!!何かあっても知らないんだからねぇ~?」
と、紗江。
「私一人だけ仲間外れはやだ!!私も行く~!!」
すでに半泣きの梨花がそう言うと、俺達は計画を立て、それぞれ家に帰った。
それから1週間後の夜11時、全員俺ん家に集合した。
「めっちゃ緊張してきた~...」
梨花が青い顔で言う。
「大丈夫だって。私が付いてるからっ」
と紗江。
「本当に大丈夫なんだよな?保証するんだよな??」
と一樹。
「だから、大丈夫だって笑」
と、俺達が会話しながら歩くと、30分程度で目的地に着いた。
「かなり雰囲気あんな~...」
と、一樹。
「確かにヤベェかもな」
と俺が言うと、
「え!?ヤバい?!大丈夫なんだよね?!」
「大丈夫大丈夫w梨花、ビビり過ぎだよ~」
と混乱する梨花と、なだめる紗江の会話が聞こえて来る。敷地内に入ると、雑草が生え放題になっていた。土を踏む音さえ、気に障る。そんな極度の緊張で歩き続け、玄関までやってきた。古い外見だが、壁にひびがあるだけで、破損や、窓ガラスの割れなどは無かった。
「開けるぞ?」
俺が小声で言うと、おそるおそる全員が首を縦に小さく振った。
俺は玄関のドアに触れ、力を入れた。しかし、立て付けが悪いのか、なかなか動かない。そこで、俺が力を強めると、
(ガチャガチャン!!)
「キャーーー!!!!!」
梨花が叫ぶ。想像より大きな音が鳴ってしまった。すると、
「ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁあぁ"ぁぁ"あぁ"ぁぁ...」
嗄れた女性のうめき声が聞こえてきた。
「に、にに、逃げろーーーー!!!!」
そう叫んだはいいものの、体が動かない。
「金縛りだ...」
と一樹。
大号泣する女子2人。
「ぁぁ"ぁ"あぁぁあ"ぁ"ぁ"ぁぁ"あ"ぁ」
どんどん近づいて来る...
_人人人人人人人人人人人人人人人人_
>お"ま"え"らかーーーーーー!!!!!!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
「いや~~~~~~!!!!!!!!!!!」
目の前に肌が腐敗した女が現れた。
「はいカーーーーーット!!」
「あぁーもうマジ無理~~!!!!」
吉弘が叫ぶと、梨花は超号泣した。紗江もかなり泣いている。
「いや~、さすがだよ君達!!」
「何言ってんだよ、吉弘w大物感出すなw」
俺が吉弘にツッコむと、
「お疲れお疲れ~!!」
今度は佑樹が出てきた。
「お前副監督のくせにラスボス感出すなw」
俺が更にツッコむと、
「いやでも、おかげで良いPVになりそうだよ。ありがと。」
吉弘がちょっと真面目に言った。
「梨花ちゃん大丈夫~?!」
原案の佳名が梨花のもとに走っていく。
「梨花かなり泣いてんな~。(なんで文化祭のお化け屋敷のPV撮影ごときでこんな思いしなきゃいけないの~!!)って絶対思ってるよ笑」
と、俺が言うと、
「お疲れ~!!」
お化け役の那奈が着替えてやって来た。
「いやマジスゴかったぜ?めっちゃ怖かったもん。特にあの声マジ怖かった!!」
と、俺が言うと、
「本当だよ!!俺、あんな声頼んでなかったよな?アドリブであんなのできるなんてスゴすぎ!!」
と、吉弘が同情した。すると那奈は、
「え、アドリブなんてしてないよ?笑」
なんてとぼけたので、
「あのあ"あ"あ"のとこだよ?」
と、俺が教えると、急に深刻な顔になって、
「そんなの私、言ってないよ??」
どうやら本当らしいその言葉に、俺と吉弘は文字通り、固まった。
その後、みんなでお祓いを受けた。お化け屋敷も中止になった。吉弘は悔しがってなんていなかった。当然だろ、と、苦笑いしていた。後からわかった話なんだけど、吉弘が雰囲気のある家を探して見つけたあの空き家は、特に調べずに撮影に使ったらしい。調べたら、何か分かるかも知れないけど、そんな勇気、誰にも無かった。
心霊スポット A @lal
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