第5話 友人
「今年も暑いねー。汗が止まらないよ」
Tシャツに短パンと、ラフな格好をしたこの人。
「そうですね。これだけ暑いと二人が熱中症で倒れないか心配です」
「子どもたちのこともそうだけど、遥香さんも気を付けないと。君が倒れたりしたら二人も心配するからね。大輔だって元気でいてほしいと思ってるよ」
「はい。神田さんも気を付けてください。旦那が悲しむと思うので」
朗らかな性格とふくよかな体型も相まって、人当たりの良さが可視化されていると言えるほどに滲み出ている。
「二人もお母さんに心配かけないようにちゃんと食べてよく眠るんだぞ。でないと夏バテするからな」
「おじさんは少し運動した方がいいですよ」
運動部としては気になるのだろう。たしかに去年と比べば多少丸みが増したような気もするけど。説教にも似たその様子はまるで父親の健康を気にする息子みたいだ。
「うーん。祐輔くんは運動部なだけあって手厳しいな。運動は得意じゃないから動くのはちょっとなー。動かなくても痩せられる方法とかないかな?」
「そんなの知りませんよ。普通に運動すればいいじゃないですか」
「なんだー。知らないのかー。祐輔くんもまだまだだなー」
「いや、自分で調べてください」
「それは面倒なんだよなー」
「痩せる気ないでしょ」
「その反応、ますます大輔に似てきたなー。同じようなことよく言われたよ。学生時代に戻ったみたいで楽しいな。その調子で頑張ってくれたまえ」
漫才のように会話を繰り広げていてとても楽しそうに見える。昔から夫にツッコませていたらしく、同じような調子で祐輔くんにも接している。
その横で、二人の会話が終わるまでそわそわする夏樹くんが目に映る。
「おじさん! あのゲーム買った?」
「ん? あー、あれか。買ったけど全然勝てなくて進まないんだよ」
「えー。ストーリーは簡単じゃん。クリアしてからが面白いのにもったいないよ」
「頑張ってみるよ」
なにやらゲームの話で盛り上がっている二人。夏樹くんに関して言えば、友達と話しているかのように興奮気味にコツを教えている。そのあまりの熱意に気圧され気味の神田さんを助けるように祐輔くんが止めに入る。
「俺が来るの待ってる気がするし、そろそろ大輔に会いに行ってやるか」
「はい。夫も楽しみにしていると思います」
待ってないから来るなとツッコみを入れつつも喜ぶ夫の姿が目に浮かんだ。
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