あんたいとる！-untitled!- 3

Act:42『撫でて、くれるかい？』

唯「彼のスキルを紹介するよ」

蛍「また早食いだの大食いだの言うつもりか？」

唯「ううん、頭を撫でるのが上手い」

蛍「なんだそりゃ……」

悠「私の頭で試してみてください！」

蛍「いや、得意じゃねえって……撫でるぞ？」

　　なでなで

悠「ふわぁっ……んっ……」

蛍「へ、変な声出すなっ！！」

唯「想像以上だね」

悠「せ、先輩！　一体どんな……」

蛍「いや、待て。普通に撫でただけだぞ？」

悠「普通に撫でて……なんでそんなに……」

蛍「そ、そんなにってな、なんだ？」

悠「なんというか……き、気持ちいい？」

唯「ほう」

悠「あ、いやっ！　今回は正直に気持ちいいと思ったんですよ！？」

唯「ふふ、ボクは何も言っていないよ？」

悠「あうう……」

京「ほたるくーん！」

蛍「京」

京「ん、何してるん？　もしかして漫談？」

蛍「してるように見えるか？」

悠「京ちゃん先輩！　頭撫でてください！」

京「ほえ？　ええよ！」

　　なでなで

悠「……普通だ」

京「え、ボケるとこやった！？」

蛍「違うと思うぞ」

悠「うーん、やっぱり先輩のは比べ物にならないくらい凄いです」

京「ほたるくん、めっちゃ擦って火傷させるん？」

蛍「どんな速度で撫でてんだ俺は！」

唯「確かに、彼の手なら高速で動かすことも可能……」

蛍「お前が言うと嫌な予感がする。変な想像するな」

悠「先輩はどちらの手でするんですか！？」

蛍「話を広げるな！」

京「そんな凄いやったらウチも撫でてみてや！」

蛍「ええ……わかったよ」

　　なでなで

京「……」

悠「ど、どうですか？」

京「……にひひぃ」

蛍・悠（めちゃくちゃ喜んでるー！！！）

京「はっ！　なんか凄かったわ～！」

唯「証明されたね」

桜「みんな、どうしたの集まって？」

悠「あ、桜先輩」

桜「？」

蛍「……やるのか？」

悠「もちろんです！」

蛍「はぁ……桜、ちょっといいか？」

桜「えっ、な、なに？」

蛍「理由は聞かず撫でられてくれ」

　　なでなで

桜「えっ……！！！」

京「なはは、桜ちゃん顔真っ赤や！」

悠（桜先輩、可愛い……）

桜「び、びっくりした……」

蛍「わ、悪いな」

桜「ううん、大丈夫だけど……」

唯「ふふっ、また一人虜になってしまったね」

悠「先輩、恐るべし……」

蛍（なんなんだこの流れ……）

＊

蛍「そもそも、なんで俺が頭撫でるの上手いなんて話になったんだ？」

唯「この前舞さんに聞いたんだよ」

蛍「舞が？」

唯「うん、ご両親よりも気持ちがホッとするって」

蛍「そうだったのか……新たな特技を見つけちまったな」

唯「でも、ボクはまだ半信半疑さ」

蛍「なんでだよ。さっき『証明された』って言ってたじゃねえか」

唯「当のボクはまだ撫でられていないからさ」

蛍「え……」

唯「……撫でて、くれるかい？」

蛍「……」

唯「……」

蛍「……な、なんでだよ。撫でねえよ」

唯「……」

蛍「……」

唯「ふふっ、そうか。それは残念だ」

蛍「……」

唯「じゃあ代わりに、ボクが君の息子を撫でてあげよう」

蛍「おい！！！」

唯「ふふっ、興奮してしまったかい？」

蛍「してねえよ！　ったく……」

唯「またいつかお願いするよ。その時は撫でて欲しいな」

蛍「考えとくよ」

唯「うん、ありがとう」