第2話 潜入準備

 

「それでは、潜入計画を立てていく!」

「おー!」

 3人は、魔法世界の地図を開いた。魔法のグーグルマップみたいなものだ。拡大や縮小など、指の動きで自在に地形を見ることができる。

「今いる場所が、ここ。クルトコックの街」

「海産物がおいしい海辺の街です」

「そう。ここから、政府魔法帆船ナグルファルの特別便に乗って、政府のあるセントラルアイランドへ向かう!」

「特別便なんて、私たち乗れるんですか?だって、ジャシャはともかく、私たち二人はこの世界の証明書持ってないですし」

「そうなんだ」

 だから、と陣聖は言った。

「隠れて乗る」

 マリナは口に手を当てた。

「密航ですか!悪いことしますね。燃えてきました。でも、ばれるかもしれませんよ」

「そうなんだが」

 陣聖は頭の後ろをかいた。

「まあ、それでうまくやり過ごせたと仮定する」

「まあ、仮定するんですか」

「そうだ。船を降りて、上陸成功したと仮定する」

 問題は次だ、と陣聖は言って、別の資料を二人の前に提示した。

「まず、政府内部の構造はよく分からない。どうせ門番的な奴がいるんだろう」

「セコムみたいなやつが」

「そう。アルソックみたいなやつがな」

「どうするんですか」

「そこで俺は、排水施設からの侵入を考えた」

 陣聖は資料の図を示した。資料には島を横から切って見た図が載っていて、彼が指を置いたのは、島の真下の×印のところだ。

「女王、皇室、首相、大臣そして側近に議会、裁判所職員。総勢300人以上があそこで寝泊まりして、生活しているわけだ。水を島の外に排する穴が必要不可欠だろう。排水施設が島に外付けされていて、およそ外部から見えないところ、つまり、水の下に隠れていると見た」

「水に入るんですか」

 マリナは口をとがらせた。

「私、泳ぐの苦手です」

「自慢じゃないが、俺も苦手だ」

「じゃあ、だめじゃない?」

「いや、方法はある」

 陣聖はマリナを指さした。マリナは首を傾げた。

「おまえのロボットで水に潜って、排水口から侵入するんだ」

「おお!なるほど、それならいけます」

 マリナはうなずいた。

「アスティカ様なら、水も行けるし、狭いところも通行可能ですし」

「よし、そいつでいこう。政府施設の中に入れたと仮定して」

「仮定して」

「あとは、ひたすら地下通路を探す」

「地下通路?」

「ああ。俺たちが探している宝箱はある男が持っているらしい」

「誰ですか」

「風下博士、という男だ。彼が幽閉されている研究所は地下にあって、ただ一本の地下通路を通ってたどり着くことができるらしい」

「幽閉?」

 マリナは口に手を当てた。

「その人、幽閉されてるんですか?何か、悪いことでも」

「いいや。無実の罪だ」

 陣聖は顔をしかめて、首を振った。

「平和そうな世界なのに、そんなこともあるんですね」

 マリナはしみじみと言った。陣聖はそれに肯定も否定もしなかった。

「あとは?」

「・・・よし。作戦を練るのはここまでにしよう」

「え?」

「あんまり、がんじがらめに計画を立てると、その場のアクシデントに対応できなくなる」

「・・・なんか、社会人になってから、役に立ちそうですね」

「そうだな。なんかこれ会社で習った気がするわ」

 陣聖はそう言って、天を仰いだ。


 

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