迫り来る『毒』

「あちぃー!!【毒耐性 中】じゃあダメかぁ!?」


 攻撃を回避できた。と思っていたが、想像以上に≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の攻撃範囲は広かったのだ。

 口から吐かれた紫色の液体が、オレの身体に少量ではあるが付着してしまった。肌が焼けるような痛み、そしてオレの視界に映り出されるHPバーの下には、『毒』の状態異常を告げるマークが点灯した。

 そしてオレのHPは削られ、立ち待ち『60』から『48』に減少する。


「ほんの少しの量でもこれかよ!?って……このガスも……毒か!?うっ……」


 液体と一緒に吐き出されたガス……それはオレがいる場所、この広い空洞すらも覆い尽くそうとしている。咄嗟に両手で口を塞ぐ。


 だが、オレのHPバーの値は減少を知らせている。刻々と削られていくHP。『48』からまた減少して、HPは『43』を指していた。


「このままじゃあ、ヤバい!!」


 オレは必死の思いで、取得したスキルの効果を思い出していた。スキル【吸血魔】のお陰で、消費したMPは先ほどの【蓮斬(ディザスター・バースト)】で回復は出来た。


「HPが『20』になれば【エンジェル・ハート】で回復出来るから……それまでは… 【蓮斬(ディザスター・バースト)】が使えるのは後4回だけ……使うしか無いな!?」


 この【蓮斬(ディザスター・バースト)】の1日に使える回数制限は5回だけだ。先程の攻撃でHPバーを3本の内の1本の半分は削れたのだから、残っている回数分を撃ち放てば勝機はあるのだ。が、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の攻撃、『毒』を伴う液体とガス、それとかぎ爪での攻撃を避けつつ、隙を発見して攻撃に移るのは至極困難な事である。


 【エンジェル・ハート】のオート回復、それは10分間被ダメをゼロに抑えなくては完全回復には届かない。しかし、攻撃範囲の広い状態異常『毒』を持つ攻撃は回避困難であった。


 そうは言ってもだ。攻撃を仕掛けずには勝機は無い–––。


「うぉーーっ!!」


 オレは≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫に向かって、この毒ガスの中を駆け出す。溶けるような痛みに襲われながらも。駆ける最中でもHPは刻々と削られていく。42…41…40……38と。


「【蓮斬(ディザスター・バースト)】!!」


 スキル詠唱するや否や、両手を高く挙げては≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫に接近する。


 それと同時にまた口が開き、雄叫びと共に吐き出される液体とガス。そこを突破せんと、オレの身体は≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の前にまで吹っ飛び、高く挙げられた腕を、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の脚目掛けて振り下ろされては30連撃を仕掛ける。


 低い咆哮が鳴り響く中、甲高い音が鳴り響く。

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