全身全霊で

 ≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫のHPバーは、半分に削られた3本のバーの内の1本は、ほんの少しのHPを残していた。

 【蓮斬(ディザスター・バースト) 】を2回繰り出しても、HPバー1本すらも吹き飛ばす事はできなかった。


「さっきよりも固くなってる気がするんだけど…気のせいか?」


 そしてオレはまた後方へと飛び跳ね、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の一挙一動を見逃さまいと凝視する。


 すると、銀龍は2枚の翼を地面に叩きつけては、空中に飛び上がるのだ。飛んだと思いきや浮遊を始め、2枚の翼を上下に激しく振るう。

 それによって巻き上がる火山灰が舞いながら、強烈な風を呼び込み、竜巻を生む。その竜巻は天にまで登るほどの勢いで回転し、オレを喰らおうと襲いかかって来るのだ。


「流石に、これはヤバいよ!!」


 猛スピードでオレの方へと接近して来る。それを交わそうと……


「…………っはぁっ!!」


 転がりながら左へ回避する。まんまとオレに回避された竜巻は、そのまま前方へと突っ込み、土壁を破壊する。大きく開けられた土壁の穴が、その竜巻の威力を物語っていた。粉々に砕かれた土壁の瓦礫(がれき)が地面へと落下する。


 ひとつの切り札だったのだろうか。その攻撃を難無く回避してしまったオレに向け、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫は大きく雄叫びを上げては、翼を上下に振り、地面へと着地する。


 あの強烈な竜巻のお陰で、辺り一面を飲み込んでいたガスは消え去られた。と思いきや、再び口を開き『毒』を持つ液体とガスが≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫から吐かれたのだ。


「くそぉーー!こう何度も何度も……」


 『34』まで削られたHPが、さらに削られ『33』になった。それが合図のようにオレの口からスキル詠唱が放たれる。


「【蓮斬(ディザスター・バースト) 】!!」


 使用回数…残り3回となったこのスキル。オレはこれを連続して、全身全霊で繰り出す事を決意した。しかし、今のオレのHPでは時間に余裕は無いのだ。状態異常の『毒』によって刻々と削られて行くHP。【エンジェル・ハート】でのオート回復が発動するにせよ、『毒』によってHPが削られて行くスピードには敵わない。

 いずれにせよ、攻撃あるのみ!その一択しか無かったのだ。


 そして毒ガスに覆われる中、オレは【蓮斬(ディザスター・バースト) 】を3度繰り出したのだ。その度に冴え渡る咆哮と、鱗を叩き切る音が甲高く鳴り響いた。


 計5回にも及ぶスキル【蓮斬(ディザスター・バースト) 】を喰らわせた、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫のHPバーは……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る