怒りの咆哮

「クっ、もう15分経ったのかよ!?」


 オレを中心に囲まれた光り輝く防御壁が消えていく。

 その壁が消えた今、未防備のオレを見逃さまいとし、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の左腕のかぎ爪を振り上げられ、そのかぎ爪がオレの身体目掛けて振り下ろされる。雄叫びを発しながら。


「……っはぁ!!」


 コイツはオレよりも遥かに強い–––。

 しかし、【覚醒(ホーリー・アクセル】で強制的に上げられた【AGI】を持つオレには、コイツの一挙一動は止まって見える。時の観測者にでもなった気分だ。

 

 オレは右に飛びながら、襲い来るかぎ爪を避けたのだ。


「っすげぇ風圧……これ食らったら一巻の終わりだな!?なんとしてでも避け切らねぇと!!」


 ここで≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の隙が与えられた。かぎ爪を振り下ろすその攻撃……図体が大きく、モーションが大きい上に次の攻撃に移る挙動が遅い。ガラリと開けられた≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の胸が顔を出す。犇(ひし)めき並ぶ、銀色に輝く鱗が鮮やかであった。


 オレはそこを目掛け……


「【蓮斬(ディザスター・バースト)】!!」


 詠唱と同時にオレの身体はスキルモーションに入る。両腕が横に伸ばされ……そして、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の前まで身体が移動される。視界に大きく映り出される銀の鱗。


 左手に装備された【アサシン・ブレード】が、最初の1打目≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の鱗に覆われる腹に斬りかかる。


「キィーーーン!!」


 輝く火花を放ち、強固な鱗を叩く音が甲高(かんだか)く響く。そして、立ち待ち残りの29連撃を繰り出す。その間、甲高く響く音は鳴り止む事はなかった。


 ≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫は怒りの咆哮……雄叫びを上げる。


「やっぱり……固てぇな!!ハァハァっ……」


 頭上に表示される3本のHPバーは、その内の1本の半分だけを削っていたに過ぎなかった。すかさず、オレは後方へと間合いを測る為に飛び跳ねる。


 その時だ……


 ≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫が繰り出した1打目の攻撃の後の体勢は整えられ、次の攻撃へと展開される。それは、さっきオレのスキルで生成した防御壁に吐かれた……銀龍は大きく口を開けて……


 再び咆哮を放って……


 その大きく開かれた口から、濃い紫色の液体が噴射される。それと同時に淡い紫色の霧のようなガスが放たれる。


「クっ……クソッ!!…………っはぁっ!!」


 絶え間なく辺りは≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の口から吐かれたガスと液体で、この空洞を覆った。


 それを避けるしか出来ないと……さらに後方へと飛び跳ねる。


 だが……

 

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