奈落の底は隠しダンジョン!!
並ぶ松明(たいまつ)に火が灯されて、オレが今いる洞穴(ほらあな)は明るくなり、土と岩肌を松明の火で影となり、ゆらゆらと顔を出していた。
オレには【エスゴール氷山】を1人で……と言うのを回避してここにたどり着いたわけなのだが…その【エスゴール氷山】よりも強大なモンスターがいるとなっては、オレ1人でここに足を運んできて良かったのだろうかと、今更ながら大きな不安に直面している。
隣にはもう、シズの存在はいないのだから……
しかし、ある使命感のようなものを抱き、進むしかないと言い聞かせて、目の前に見える2つの入り口に近づく。
そこも松明がずらりと並びその先を照らすのだが、目を凝(こ)らしてもその先の奥までは見えない。2つとも奥には闇が潜むだけ。奥への道のりの長さを物語っているようだ。
「う〜ん、どっちに行こうかな?」
違いを見せない2つの入り口。オレは右に行くべきか、それとも左に行くべきかを悩んでいた。
しかし、選び抜いた理由は単純であった。
首を斜めに、悩んでいたところだ。右の入り口から強烈な風が舞い込んできたのだ。そして、その風に煽(あお)られながら松明の火は激しく揺れ出した。
「うん?風?右から風って事は外に通じてる!?う〜ん…外行っちゃあマズいよな!?……って事で左に行くか?」
そんな理由で左の洞窟を進む事にした。松明の火で照らされる道。もしもこんなところがリアルに存在していたとしたら、断じてこんなところには足を踏み入れないだろう。ましてやたったの1人では尚更だ。
岩の突起物の影…松明に照らされて踊っているのだ。そして、1本の道……どこまで続いてそうな洞窟だ。
「やっと……うん?階段?」
暫く歩いただろう。その先には石で組まれた下り階段があったのだ。その先は壁で塞がれ、先へは行けない。
「ここ下ったら良いのかな?」
そう呟いては、恐る恐るその石階段に近付く。1歩、2歩と……その瞬間だ。石階段は砕け、底へと落ちて行く。岩と岩が叩き合う声が木霊(こだま)する。落盤であった。そして、それはオレの足元まで襲う。すかさず後退りする。奥の壁からおおよそ10メートル程だろうか。
落盤し、全て底へと落下してしまった。石階段があった場所からは闇が顔を出しては、嘲笑っているように闇の深さを知らせるのだ。
「これっ……ヤバイな!?これじゃあ先に行けないし、引き返して右の洞窟行くしか無いな!?」
そう慌てては来た道を戻り、走り出す。この極振りにされた【AGI】の力を出しながら、全力で走り出した。
「やっぱり…亀裂の中に落ちて…それで洞窟?それにこんなトラップみたいなものもあるし……やっぱりここが隠しダンジョンなのかな?」
こんな悠長な事を言ってはいるが、あの落盤に巻き込まれたらひとたまりも無かったのだ。そして、底に落とされると……もしも底が無くシステムオブジェクト外であれば、本当の奈落を彷徨うことになっていたのだ。
すると、さっきまでいたこの洞穴の広場へと戻って来た。そして、あの強い風が吹き荒れた右の洞窟に向かう。
その時だ……
「ギャウォーーーーーン!!ギャーーー、ギャーーー!!」
モンスターの雄叫びと、翼をバタつかせる羽の音がこの洞穴中に鳴り響く。
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