Lv.1カンストのオレなんかにも仲間ができましたw?

 オレはドヤ顔で立ち竦む彼女の方をチラッと見た。

 さぁ、オレに泣きつけ!と言わんばかりのドヤっぷりであった。

 しかし、その一言は意外なものであったと同時に、これまでほんの少しの彼女への気持ちが揺らぐ事になった。

 顔立ちは抜群に良し。アイドル級である。身長だって小柄でいてオレの好みであった。そう、あの【始まりの街】で一眼見た時…こんな可愛い娘がVRMMORPGをやってるなんて…そんな淡い気持ちを抱い事もありました……


 しかし……


「おのぉ、なんで倒しちゃったんですかぁ?あのクチバシでツンツンと頭を・・・こう、か弱い私を蔑(さげす)んで、あのふしだらな格好で私を……」


 なぜ?何故に彼女は赤面してこの様なこと言い出すのであろうか?


『こいつはヤバイ奴だ!!』


 しおらしく、そして無垢な瞳とは偉い違いであった。


「あのぉ……初見で悪いんだけど、もしかして…過度なMっ子でど変態さんでおられますか?」


 オレの目は彼女への偏見と、人格否定の視線を浴びさせた。


「ちっ、違いますよ!えっ?違わない?えっ、どっ、どうなんでしょうか?ただ、ああいうプレイは堪らなく好きってだけです!」


「それが変態って言うんだよ!!このっ、ど変態がぁ!!初見でこんな事突っ込ませんなよ!」

 と、つい突っ込んでしまったのだ。


 はたまた赤面を見せる彼女の姿があった。


「こっ、これは…言葉責めと言うあのラノベでよく見る…あぁ、もっと罵って欲しいですぅ」


 赤面の表情と、体を震えさせて興奮している彼女の姿があった。


『このオンナ!!』


「ったくよぉ、お前の事は……はい、見ませんでした!見てません!見えてません!んでオレは先を急ぎますから…」


 彼女の回答は早かった。

 しかしまだ赤面を浮かべている。


「そっ、そんなぁ、そんなこと言わないでくださいよ!こんなか弱い私を1人ここに置いてなんて…そっ、そうだ!パーティーを組んで下さい!!あなたといればまた、モンスターに…エヘっ、エヘっ、アヘっ……」


 オレの上着の袖口を引っ張りながら、発情期化しているこのオンナは、この手を離してくれない。


「なんでオレがお前なんかと…」

「そっ、そんなこと言わないで、パーティー組んで下さいよぉー」


 いっこうにオレの袖口を離そうとしない。彼女の断固たるこの意志に負けてしまった。否、改めて思うのだ。間近で彼女の顔を見ると、めちゃくちゃ可愛いのだ。


 オレは明後日の方を向きながら……


「ちっ、しょーがねぇーなぁ…分かったよ!組んでやるよ!パーティー!組んでやるから袖離せ!」


 彼女は目線を上げて、オレの顔をまじまじと眺めながら言い出すのであった。その彼女の上目遣いに心がキュンとしたのを覚えた。

 しかしだ。絶対回避必至のこの状況で、自分自身への攻撃を回避すると言うのは、そう易々簡単に出来るほどの神業では無い。

 その上で、パーティーを組むとなれば、今以上に神経を研ぎ澄ましていかねばならなくなるのだ。それとは相反するこの欲情っぷりにはヘドが出た!


 オレには生活がかかっているのだから–––。



「ほっ、本当ですか?また私に哀れみの言葉を…貶していただけるの・・・」

 たちまちの言葉であり、咄嗟に突っ込んでしまうのだ。


「ばっ、馬鹿野郎!そうじゃねぇよ!!取り敢えず今パーティー組んで、この隠しダンジョンクリアするって言ってんだよ!このクソど変態がっ!!」


 そう言い放つと、彼女は地面に塞ぎ込んでしまった。たちまち独り言が囀(さえず)るのである。


『また私のことを罵って…嬉しくは無いのですが…興奮……』


「良いから、行くぞ!」

 と、彼女の服を引っ張りながら、重たい腰を上げようとした。立ち上がるなり彼女はオレの目の前まで接近して、こう言い放ったのである。


「じゃっ、パーティー組むと言うことなので、改めて…私【シズ】って言います!宜しくお願いします!」


 そう放つと、深々と頭を下げるのであった。この見た目と、このよく分からない性格だが…素直さもあり礼儀正しく…彼女の意外な面を見てしまった。そんな感じがしてならない。


「あぁ、オレ【クロユキ】!宜しくな!取り敢えずパーティー要請するか!?申請するから承諾してくれよ」


「あっ、はい!」


 こうして、このクソど変態オンナとパーティーを組み、この隠しダンジョンを突破する事になってしまったのだった。

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