選ばれし者

城内にはすんなり入れた。

中に兵や大臣たちの亡骸があったと言われるのが500年前。今はただの古ぼけたホラーパレス状態。

あんなことがあっては誰も住むはずがないし、他にお城を作ろうってなるよね。国王住んでないからね。行事ごとに(コストダウン甚だしい)玉座に座ってるだけで城下で暮らしてる。


「……めっちゃ誘導されてない? 」

『大丈夫。私がレヴィを守るわ』

「ベッキー! 私たちずっと一緒でしょ? 」

『……貴女は真実を知ることになるわ。さぁ、の元へ』


私は黙されていたんだろうか。

だめ、悪い憶測なんてロアを生むだけ。

私はベッキーを信じるわ。


500年前、いなかったはずの玉座に誰か座っている。

ボロボロで布はない。欠けた大理石がくすんだ色をしていた。

要するにすごく気味が悪い光景。

灯りがついても薄暗く、画面を閉じ、ペンライトにしてやってきたくらい。


『おお、我が愛しのよ。待っていたよ。何故私を受け入れぬ。おまえの為ならば全て犠牲にしても構わない。体裁の為に女を娶っても愛せない。おまえを愛しているからだ。何人連れてこようが満たされぬ。歳が離れているなら若返ろう。おまえの願いを叶え続ける為に永遠を生きよう』


玉座に座った男の口から、音のような言葉が流れた。眼孔には光がない。そもそも生きてるの?


「ちょっと伝わってるの違うけど、何か(生理的に)気持ち悪い……」

『ええ、そうなの。否定されても諦めない粘着体質だから』

「……え? 」

『レヴィ、貴女は真実を知り、記す為に選ばれた。に変化し、今まで貴女が刈り(パトロール)取ってきた。これが根源、最後よ。胸にある母体を破壊したらおしまい』


促されるまま、身動きひとつしない男の前に立つ。胸の真ん中に赤黒い丸みのある物体が小さく脈打つ。……これだね、気持ち悪い。

静かにナイフを刺し、音もなく『種』が崩れると男も消えた。


『兄様の想いには応えられないと告げても聞いてもらえなかった。でも、最期位見届けたかったの。ありがとう、レヴィ』


ベッキーが光を増してこちらに来る。心臓が脈打つ。


『サヨナラ、レヴィ。に願いを……』


ベッキーは私の手の上で割れ、を残して消えた。



───『種』に等なく、『ロア』はどこにでも存在する。『種』そのものには力などない。今、一つ破壊されただけなのだ。

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Devil Seed 姫宮未調 @idumi34

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