レベッカとレベッカ
私、レベッカ・シュヴァラは、法魔ロアナビア女学院の十四年生。
幼等部・初等部・中等部・高等部・大学部・大学院があり、一貫して学年は年表記をする習わしだ。
だから、高等部二回生であり、学院に十四年いるということ。
大学院は魔法を極めんと研究と実演ともにすることになる。
要は大学部卒業後、何らかの職につきながら新たな魔法研究をする二足のわらじ。
学院の話はこれくらいにして。
私は先程、友人のアシュリー・モリガンから、『Devil Seed』の話を聞いたところ。
彼女は噂話が大好きな、赤毛のお下げの似合うおっとり娘。
見た目とは裏腹に、えげつないことも言ってしまう。
『Devil Seed』
噂が噂を呼んでいる部分もあるが、粗方間違いじゃない。種の詳細が結果論しかないことが問題なわけ。
強欲国王のようにどろどろしい性格のやつの前にしか現れない悪そのものなのか、なにか条件があって、たまたま運が悪かったのか。
運が悪いだけで国が滅びかけるのもどうかとは思うけど。
何故私がハッキリ断言できるかって言うと……。
アシュリーだけじゃない。学院の院長たち以外知らない事実。
私は、ネプシュヴァラの国の王位継承権を持った王族なの。他にも何人か候補はいるんだけどね。
直系である私が一番有望株扱いを受けているけど、あまり嬉しくない。
あの業突く張り国王の妹の家系だから。
行方不明になった後、婿養子を貰って国再建に全てを掛けたお姫様。歳も離れていて、兄妹と言うより親子。兄のせいで良家は軒並み協力を拒否。半ば勘当状態で、恋人が彼女の為に尽力したってこと。
感動秘話だけど、兄貴のせいで苦しいことばかり。いい事の方が少なかった。
結果、形ばかりの王が鎮座する国になってしまったの。
前置きが長くなりすぎた。
だからね、アイツが関わっているなら私が片をつけなきゃ行けないわ。
正直誰がってこともないだろうけど、何故かそう思ってしまう。
きっと、お姫様と同じ『レベッカ』だからかもしれない。私の中にある彼女の血がきっと。
暗がりの寮部屋。淡い光が浮かび上がる。
近づくにつれ、それが何なのかが分かる。
空中を泳ぐ金魚がそこにはいた。
淡い金のミルククラウンを掲げた、体は透明で大きな金のブロッサムが三つ、髪飾りのように表面に出ている。中にはピンクブロッサムがふわふわと漂っている。
『……行きましょう。レヴィ』
生まれた時から私の傍を離れない不思議な生き物。ずっと守ってくれていた。
いつしか、大切なパートナーになっていた。
声から察するに、メスだと思う。
私と同じ名前だから、私は『ベッキー』って呼んでいて、『レヴィ』って呼ばれてる。
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